日本共産党

2003年2月6日(木)「しんぶん赤旗」

市田書記局長の代表質問

参院本会議


 日本共産党の市田忠義書記局長が五日の参院本会議でおこなった代表質問(大要)は次の通りです。


暮らしと中小企業を支える

政治に切りかえてこそ

日本経済は再建できる

 私は日本共産党を代表して、小泉総理に質問します。

小泉構造改革の破たんは事実が証明している

 あなたが総理になって一年九カ月がたちました。国民への負担増と、「不良債権早期処理」の名による中小企業つぶしを柱とした「構造改革」によって、国民の暮らしと日本経済はいったいどうなったでしょうか。

 完全失業者は、あなたが総理に就任して以来、連続して増え続け、十二月はついに過去最悪になりました。勤労者世帯の実収入は、五年連続で減り続けています。家賃が払えず、住む家を失う人も増えています。生活保護受給者は激増し、史上最多となりました。

 自殺をした人は四年連続三万人を超え、なかでも経済的理由による人が大幅に増えています。昨年の企業倒産は、一九八四年以来戦後二番目に多い一万九千四百五十八件に上っています。実体経済の反映である株価も下がりっぱなしです。

 国民のくらしと日本経済は、これまで経験したことのない深刻な危機に直面し、税収は落ち込み、財政赤字もますますひどくなっています。

 小泉「構造改革」の破たんは、これらの動かしがたい事実が証明しているではありませんか。「改革なくして成長なし」という言葉が、いまほどうつろに響くことはありません。この事実を総理はどのように受けとめておられるのですか。

 「もう我慢できない。なんとかならないか」。これが、多くの国民の共通の思いであり、その声に真正面からこたえるのが政治の責任であります。ではなにが必要か。

 私たち日本共産党は、(1)社会保障分野での負担増を中止すること、(2)庶民や中小企業への増税をおこなわないこと、(3)「不良債権処理」の名による中小企業つぶし政策の転換を図ること、(4)雇用をまもり失業者の生活保障に万全を期すこと、この四つの緊急対策が、国民のくらしを応援し、個人消費を拡大して、日本経済を再生させる第一歩になると考えます。

 ところが小泉内閣は、こうした国民の切実な要求にことごとく背を向け、「失敗を次の成功に生かす」どころか、歴史に学ぼうともせず、破たん済みの誤った道をしゃにむに突き進もうとしています。

社会保障の負担増中止を求める

 国民が望んでいる、ただちにやるべき第一の問題は、社会保障分野での二兆七千億円の負担増を中止することです。

 まずお年寄りの負担増についてです。政府は、年金切り下げで、三千万人の高齢者から三千七百億円もの所得を奪おうとしています。

 昨年、年金切り下げが問題になったとき、当時の宮路厚生労働副大臣は、「個人消費にも大変なマイナスを与えますし、また家計にも、苦しさをさらにエスカレートさせる」から見送ると述べました。ところが小泉内閣は昨年秋、お年寄りの医療費負担を二千億円増やし、四月からは、六十五歳以上の介護保険料を約一千億円引き上げようとしています。

 こんなに負担を増やしておきながら、年金は三千七百億円も削る。こんなことをやれば、高齢者の生活を痛めつけて消費を落ち込ませ、地域経済にも打撃を与えることは明らかであります。総理の認識を問うものであります。

 サラリーマンの負担増も大変なものです。九七年に二割に引き上げられたサラリーマンの医療費の自己負担を、今度は三割にする。いまサラリーマンの収入は減っているのです。そのなかでの負担増がどれだけ家計を直撃し、消費を落ち込ませ、病院への足を遠のかせるか、これがもたらす国民のくらしと健康、日本経済への影響を総理はどう考えていますか。

 九七年の医療費の負担増のときには、病気なのに我慢して受診しない人が二百八十万人にも及びました。収入が減ったもとでの負担増は、さらに受診抑制をもたらすことは間違いありません。そうなれば、健康悪化に拍車をかけ、かえって医療費を増大させることになります。だからこそ、日本医師会をはじめとする医療関係者もこぞって反対しているのではありませんか。こんな道理のない計画は直ちに撤回すべきであります。

 持続可能な社会保障制度のためにと、これまで何度も医療や年金の負担増が繰り返されてきました。それが国民の所得を奪い、不況を深刻化させ、保険料収入が減って新たな負担増という悪循環を繰り返してきました。社会保障への国庫負担の投入で、この、不況と負担増の悪循環を断ち切ることこそ、社会保障の持続を可能にする道ではありませんか。

庶民や中小企業への増税をやめよ

 第二は、庶民や中小企業への増税をやめることであります。配偶者特別控除の廃止で七千三百億円、発泡酒・ワイン増税で八百億円、その他、たばこの増税や消費税の免税点引き下げなど、あわせて一兆七千億円もの大増税が計画されています。これを負担するのはもっぱら庶民であり消費者ではありませんか。

 総理は景気対策のための先行減税といいますが、研究開発減税・投資減税の恩恵を受けるのは、ほとんどが黒字の大企業だけです。これで新たに投資が増えるという保証もありません。

 しかも、一番手をさしのべなければならない、赤字の中小企業にはなんの恩恵もありません。また相続税の最高税率引き下げの恩恵をうけるのは、一人当たりの相続財産が四億円を超える場合です。こんな人は、二〇〇〇年度の実績でみても数百件あるかどうかです。配偶者特別控除の廃止によって増税になるのは、千二百万世帯にも及びます。

 新聞の投書欄に「ビールより安いから発泡酒にしたのです。どこまで国民を苦しめればいいのですか」という声がのっていました。あなたは酒税・たばこ税の引き上げについて昨日、税制のゆがみを解消するためといいましたが、ごくわずかの大企業と大資産家のための減税の財源に、庶民増税をあてることが、税制のゆがみをただすことになるというのですか。国民のフトコロを冷やす「最悪の税制」ではありませんか。

中小企業つぶし政策の転換を求める

 第三に、不良債権処理の名による中小企業つぶし政策を転換することです。異常に低い金利の下で、市中には使い切れないお金がジャブジャブあるのに、この一年六カ月間で、中堅・中小企業への貸し付けは全国銀行ベースでおよそ三十三兆円も減りました。

 超低金利時代にもかかわらず、中小企業だけが異常な高金利に苦しめられています。中小企業家同友会全国協議会の調査によれば、過去一年間に銀行から金利引き上げの要請を受けた企業が関東で四割以上、そのうち七割以上の企業が、それを受け入れざるをえませんでした。

 なぜこんなことがおきたのか。総理は、「資金供給の円滑化を金融機関に繰り返し要請している」と言いますが、繰り返し要請しているのに改まらない理由が、どこにあると考えているのですか。総理が推進する「不良債権処理の加速」の名による、貸しはがし・貸し渋りの結果ではありませんか。「やる気と能力のある中小企業への資金供給について万全を期している」どころか、不況の中で歯をくいしばってがんばっている中小企業を、一方的に不良債権と認定するようなことを許した、金融行政から必然的に生じたものであり、政府の責任はきわめて重大であります。

 しかも不良債権は、処理しても処理しても逆に増えているではありませんか。くらしを支え、倒産・失業をおさえ景気をよくしてこそ、不良といわれる債権も正常になるのです。

 総理は「中小企業金融対策に万全を期します」と述べられましたが、本気でそう思うのなら現在の異常な事態をつくりだしたおおもと、期限を切った「不良債権の早期処理」方針こそ撤回すべきではありませんか。答弁を求めます。

雇用・失業対策の強化を

 第四に雇用・失業対策を強化することであります。昨年の完全失業率は5・4%で戦後最悪でした。ところが失業者を減らすのが政治の責任なのに、政府の経済見通しは、さらに高い失業率を掲げているのです。こんな政府が世界のどこにあるでしょうか。いま雇用を守る上で急ぐべきことは、サービス残業など職場の無法をやめさせることであります。

 一昨日、東京・青梅の労働基準監督署は、サービス残業で経営者を逮捕しました。全国で初めてですが、サービス残業は言うまでもなく、犯罪なのです。二〇〇一年四月から〇二年九月までの一年と六カ月の間に八十一億円の未払い残業代が支払われましたが、トヨタ自動車などでは、過労死の危険ラインをはるかにこえる年間三千時間以上の長時間労働が、堂々とおこなわれています。これを労働基準法どおりに厳格に守らせれば、新たな雇用が膨大に生まれることは明らかであります。目に余る長時間労働を強いている事業所には、法定労働時間に見合う雇用の拡大計画を提出させるべきではありませんか。

 雇用危機のもとで、判例で確立している「整理解雇の四要件」を法制化するなど、法律による解雇の規制は急務となっています。日本共産党はすでに「解雇規制・雇用人権法」の制定を提唱しています。

 ところが政府は、その要求にはこたえず、逆に金さえ払えば不当な解雇も容認するなど、解雇をやりやすくしようとしています。ただでさえ雇用不安が深刻なときに、これまであったルールまで骨抜きにすることはあってはならないと思いますが、いかがですか。

 総理は「離職者に対する早期再就職の支援を充実し、雇用保険制度を見直す」と言われました。その中身は、中・高年失業者が受け取っている失業手当をへらし、生活を脅かすことによって仕事につかせようというものです。これでは、支援どころか脅しではありませんか。問題は失業手当の高さにあるのではなく、再就職の際の賃金の低さにあるのです。

 失業の増大とともに見過ごすことができないのは、住む家を失う人がふえている問題であります。なかでも都市基盤整備公団の居住者追い出しは目に余るものがあります。

 公団が、家賃滞納を理由に裁判をおこし、強制執行で追い出した人は昨年四月から十二月までのわずか九カ月間で二千七十二件にも上っています。公団業務の基本方針は、国が定めることとなっています。この経済危機のもとで、国が率先してホームレスをつくりだすなど、あってはならないことであります。総理の見解を求めます。

 これまで見てきたように、未曽有のくらしと日本経済の危機を目の当たりにしながらあなたは、国民に新たな負担増や増税を強い、中小企業つぶしを進めようとしています。それが、今日のデフレの要因である需要の落ち込みをいっそう深刻にし、デフレを加速させることになるのは明らかであります。

 一方で、五兆円の軍事費は聖域化して手をつけようとはしません。公共事業も削ったといいますが、総事業量は減らさず、関西国際空港二期工事など無駄な公共事業は野放しにして、まともにメスを入れようとしません。これでは負担増と不況の悪循環に陥り、税収も落ち込みます。

 いまほど税金の使い道が問われているときはありません。貴重な財政資金だからこそ、国民のくらしと社会保障を最優先にすべきではありませんか。

 日本経済の源泉、原動力は一人ひとりの国民です。わが国の圧倒的多くの国民は、額に汗して働くことを尊び、人間を大切にし、助け合い、支えあってくらしています。その国民から活力を奪って、日本経済が活性化するはずがありません。

 にもかかわらず、失業率を高め、物価引き上げを政府の目標に掲げるにいたっては、なにをかいわんやであります。国民のくらしを支える政治に切り替えてこそ、長く厳しい不況から抜け出す道も開けてきます。日本共産党はそうした方向への政治の根本的転換を目指して奮闘するものであります。


市町村合併の強制はおこなわず

自治体と住民の意思の尊重を

 今年は地方政治のあり方が全国的に問われる年です。なかでも、市町村合併の動きが全国に広がり、地方政治の焦点のひとつになっています。

 日本共産党は、住民の意思にもとづいて地方自治体を適切な規模にすることに、一律に反対するものではありません。しかし自治体の合併の是非は、なによりもそこに住む住民の合意と自治体の自発的な意思によって、決められるべきです。

 ところが、いま起こっている合併の流れは、自治体の自主的な意思によるものではなく、国の行政指導、財政誘導によって押しつけられているものです。昨年十一月におこなわれた「全国町村長大会」の決議では、「市町村合併が理念なき数値目標のもとに半ば強制的に進められ、全国の町村は、その対応を厳しくせまられている」と、告発しています。

 憲法は、「地方自治の本旨」を、自治体の組織と運営にとって根本的な精神であると明記しています。国会での、合併特例法の付帯決議でも、「住民投票その他の方法により、関係住民の意向を十分に尊重すること」など、住民投票まで例示して住民の意思の尊重を求めています。総理、市町村合併に当たっては、憲法で保障された地方自治の原則にたち、強制はおこなわず、自治体と住民の意思を尊重すべきだと考えますが、いかがですか。

絶対にあってはならない小規模町村の強制的解体

 もう一つ重大なのは、自民党総務部会が示した「市町村合併に関する中間報告」と、政府の地方制度調査会専門小委員会で示された「今後の基礎的自治体のあり方について」と題する、いわゆる西尾私案についてであります。

 それらは、一定期間後も合併しない、人口一万人未満の小規模町村の権限を取り上げ、窓口業務などに限定してしまう、あるいは周辺の市や町に吸収合併することを義務づけるというとんでもない中身です。

 昨年の全国町村長大会のあいさつの中で、山本文男会長は「人口が少ないということのみをもって町村の権限が制限・縮小されるようなことになれば、いったい、地域社会はどうなってしまうのか。本当に、地域住民の福祉が守られるのか。自然や国土の保全ができるのか」「町村自治は存亡の危機にある」と述べています。

 小規模町村を強制的に解体することは、憲法が保障する地方自治の原則をじゅうりんするものであり、絶対にあってはならないと思いますが、総理の見解を問うものであります。


腐敗政治を一掃するために

企業・団体献金の禁止を

公共事業受注企業からの献金禁止ただちに

次に企業・団体献金と政・官・財癒着による政治腐敗の問題です。小泉首相をはじめ、大刀hA鈴木、片山各大臣がそれぞれ代表を務める自民党選挙区支部が、前回総選挙の直前に、国の公共事業受注企業から総額二千六百五十万円の寄付を受け取っていたと報道されました。

 関係四大臣は「通常の党に対する善意の献金」だとしていますが、献金した企業の多くは、「選挙応援のための寄付」と述べています。ある建設会社は、「何もないときに出すとかえって変にとられる」、選挙のときだからこそ、と述べています。そうであれば、自民党長崎県連の前幹事長らが逮捕された事件と、まったく同じではありませんか。総理の見解をうかがいます。

 自民党長崎県連の問題がなぜ注目されたのでしょうか。それは、ゼネコンなどから受け取った献金が、名目上「政治資金」として処理されていたものの、実態は、「選挙資金だ」と認定されたからであります。すなわち公職選挙法の、公共事業受注業者からの選挙献金を受け取ってはならない、という「特定寄付の禁止」条項が、初めて本格的に適用されたところにあります。

 その後開かれた自民党の全国幹事長会議では、「これで違法ならどうやって政治資金を集めればいいのか」との声があがったと報道されています。思わず本音が出たのでしょう。長崎県連は例外ではなかったのです。

 自民党全体がいかに恒常的に、このような法の抜け道を探して企業献金を集めていたかがうかがわれます。自民党総裁であるあなたが、まず襟を正し、自民党の実態を調査・公表すべきではありませんか。

 あなたは「法律をいくつつくっても法律に違反する。どうしようもない」、などと開き直りましたが、どうしようもないのは、法の網を逃れて企業献金を集める自民党の体質そのものではありませんか。

 公共事業の原資は国民の税金です。その税金を食い物にするとは、政党や政治家としての資質を根本から問われる問題です。政・官・財の癒着と利権の構造を断ち切り、腐敗政治を一掃するためには、「抜け道」や「言い逃れ」のできない法律をつくることです。

 日本共産党がかねてから提案している企業・団体献金を明確に禁止すること。少なくとも、野党四党が共同提案しているように公共事業受注企業からの献金を直ちにキッパリと禁止すべきであります。あなたは先の本会議で、「今度の問題を深くうけとめ、改めるべきは改める」と述べましたが、抽象論ではなくて、何をどのように改めるのかを明確にすべきではありませんか。

政党助成金制度の廃止を求める

 総理、自民党の二〇〇一年収入に占める政党助成金の割合は、実に60%にも達しています。所管の片山総務大臣は、「五割を超えるなんていうのは論外。公的依存の傘のなかで、ぬくぬくいくというのは問題」と手厳しく批判していたことがあります。五割どころか六割を超え、どっぷりと税金に依存し「ぬくぬく状態」になっている現状を、総理はどうお考えでしょうか。

 制度が導入された一九九五年から昨年までの八年間に、二千五百億円もの巨額の税金がわが党以外の政党に投入されました。この政党助成金は、支持していない政党にも税金が配分される憲法違反の制度であります。未曽有の国家財政の危機と深刻な不況のもと、国民には負担と痛みを押しつけておきながら、なぜ自分たちだけは税金の山分けをするのか。キッパリと廃止すべきではありませんか。


政府はイラク問題の平和的

解決を求める外交努力を

 私たちはいま、二十世紀の二つの大戦を通じて確立された、話し合いによって紛争を解決するという国連憲章を守って、平和な秩序ある世界にしてゆくのか、それとも、それを台無しにするのか──重大な岐路にたっています。

 一月二十七日、国連査察団の調査結果が報告されました。報告では、イラクが大量破壊兵器を持っているという「決定的証拠」は示されませんでした。同時に、イラクの査察への協力が必ずしも完全でないことも指摘されています。

 国際原子力機関のエルバラダイ事務局長は、「われわれの仕事は着実に進展しており、査察は継続されるべきだ」とのべ、「今後、数カ月以内に、イラクに核兵器開発計画が存在しないという信用に足る確証を提供できるはずだ」と表明しています。せっかく核がないことが証明されようとしている時に、武力攻撃をすれば、核開発問題の検証を永久に不可能にしてしまうことになるではありませんか。

 いま重要なことは、査察という手段を、必要で十分な時間をとって継続し、それを強化して、国連の枠組みのなかでこの問題を平和的に解決するために、ひきつづき国際社会が努力をつよめることであります。これは、世界の多くの国々と人々、強く望んでいることであります。

 総理、日本政府もこうした立場にたった外交を、積極的に展開すべきだと考えますが、いかがですか。

イラク攻撃反対、いっさいの協力拒否の言明を

 私たちは、イラクが国連決議を無条件で順守することを強く求めるものであります。同時に、米国にたいして、国連を無視した一方的な武力行使の計画を放棄することを、強く求めるものであります。

 ところがブッシュ大統領は、二十八日の一般教書演説のなかで、「イラクが大量破壊兵器を廃棄しないなら、友好国を率いて武装解除する」とのべました。

 国連が、査察によって、大量破壊兵器の存在の有無を検証する努力をおこなっている最中に、一方的・独断的に「大量破壊兵器を保有している」ときめつけ、国連を無視した一方的な軍事力行使を公言する米国の態度は、国際社会がとりくんでいる査察による解決への努力を妨害するものであります。国連憲章、国連決議を無視するものであり、絶対に許されないことだと思いますが、総理の見解をうかがいたい。

 世界の平和にとっての大問題にもかかわらず、総理が施政方針演説の中で、イラク問題について触れたのはわずか二行半でした。しかも、イラクに国連決議の「無条件、無制限」の履行を求めるだけで、アメリカのイラク攻撃に反対する、とは一言ものべませんでした。それどころか、一月三十日の予算委員会では軍事的圧力をかけることは必要とさえのべました。

 イラクに国連決議を誠実に守ることを要求するのは当然であります。全世界がそれを求めています。同時に世界は「アメリカも国連憲章や国連決議を守れ」と迫っているのです。なぜ、総理はそれをいえないのですか。

 この間、わが党の代表が、中国、中東諸国、南アジアの国々を訪問しましたが、どの国の政府も、国連憲章を守り、イラク問題の平和的解決を強く求めていました。アメリカの同盟国からもイラク攻撃反対の声がまきおこっています。

 イギリスでの世論調査によれば、84%が新たな国連決議なしにイラクを攻撃することに反対しています。43%がいかなる状況下でもイラクとの戦争に反対しています。おひざ元のアメリカでも、反戦運動が高まっています。

 戦争がはじまる前にこれだけの規模で戦争反対の声がまき起こったのは、歴史的にもはじめてです。総理、「国際社会と協調しつつ外交努力を継続する」というなら、こうした平和の流れに合流することこそ、憲法九条をもつ国の政府が、真っ先にやらなければならないことではありませんか。

 「仮定の話」などとして態度表明を回避してはなりません。アメリカは一方的な武力行使を公言し、現に大量の部隊を展開しているのです。国連を無視したアメリカの一方的な武力行使に反対し、それへの一切の協力を拒否することを明言すべきではありませんか。

罪なき市民を犠牲にしてはならない

 国連によれば、もしイラクへの攻撃がおこなわれれば、初期段階で直接の被害者が十万人、間接の被害者が四十万人、合計五十万人の被害者が生まれ、国内避難民は二百万人にのぼると予測しています。

 総理は、戦争によるこうした被害を考えたことがありますか。あなたは、多くの罪なき市民の命をうばい、傷つける武力攻撃は絶対にやってはならない、そのために日本も力を尽くすべきだと考えるのか、それとも場合によっては、罪なき市民の命が奪われても、やむをえないと考えているのか。国民の前に、ハッキリとお答えください。

 国際的紛争、とりわけ核兵器など大量破壊兵器に関する問題は、人類の生存と地球の存続にかかわる大問題であり、戦争ではなく平和的手段で解決されなければなりません。


有事法案を廃案にし、憲法に

もとづく平和の外交に転換を

 アメリカの同盟国を含む世界の多くの国々が、イラク問題や北朝鮮の核開発問題などについて、その平和的解決のために力を注いでいるときに、イージス艦の派遣や有事法制など軍事的対応のみに憂き身をやつす日本政府の姿は、世界の流れに逆行するものと言わざるを得ません。

 いまこそ、国民の声にこたえ、有事法案を廃案にするとともに、憲法にもとづく平和の外交に転換することを強く求めて質問を終わります。


市田書記局長への小泉首相答弁(要旨)

 市田氏に対する小泉純一郎首相の答弁(要旨)は次のとおり。

 【暮らしと経済の危機的状況への認識について】雇用情勢は厳しく、自殺の増加などの事態はまことに痛ましいことと認識している。日本経済は世界的規模での社会経済変動のなか、単なる景気循環ではなく、複合的な構造要因による景気低迷に直面しているものと考える。また、不良債権や財政赤字などの負の遺産をかかえ、世界的な株価低迷のなかで、戦後経験したことのないデフレ状況が継続しているなど、厳しい内外経済環境が生じていると認識している。

 【負担増が経済にあたえる影響について】医療費の患者負担の引き上げや社会保障制度改革など今回の改正は、中長期的には医療保険制度の持続可能性を高め、全体として将来の国民負担の増加を抑制するものであり、国民全体にとってプラスになるものと考えている。また自己負担の引き上げに当たっては、患者負担に一定の歯止めが設けられており、とくに低所得者については自己負担限度額をすえおくなどの配慮がなされており、必要な医療が抑制されることはないと考える。当面の景気との関係については、個々の負担増のみをとりあげて議論するのでなく、社会保障給付の拡大等のプラスの側面や、先行減税の効果なども含め、総合的に考えるべきもの。

 【大企業・資産家減税、庶民増税の指摘について】個人所得課税、酒税、たばこ税、消費税の免税点制度の見直しは、税負担のゆがみの是正や、制度の透明性の向上をはかるなど、国民がひろく公平に負担をわかちあうとの基本的考え方によるもの。

 【不良債権処理と中小企業金融の問題について】不良債権処理の加速は、金融機関の収益力改善や、貸し出し先企業の経営資源の有効活用などを通じて、あらたな成長分野への資金や資源の移動を促すことにつながるもの。他の分野における構造改革とあわせ実施することにより、日本経済の再生に不可欠のものと認識している。引き続き、やる気と能力のある中小企業への資金供給については万全を期す。

 【雇用情勢について】政府としては不良債権処理の加速などにともなう雇用への影響には十分配慮することとし、平成十五年度当初予算および平成十四年度補正予算において、早期の再就職の支援など、雇用のセーフティーネットについて万全を期したところ。

 【長時間労働の抑制、解雇ルール、雇用保険制度の見直しについて】長時間労働を抑制していくことは重要な課題と認識。事業所においても、長時間労働を前提としない業務計画および人員計画を作成するなどの工夫がおこなわれることが重要。解雇ルールについては労働基準法の改正法案を今国会に提出する予定だが、これは解雇をめぐるトラブルの防止、迅速な解決に資するため、最高裁判例で確立している解雇ルールを法律に明記することなどを内容とするもの。

 【都市基盤整備公団の賃貸住宅での家賃滞納による強制執行について】都市基盤整備公団の賃貸住宅において家賃の滞納が続くときに訴訟を提起し、その判決をうけて明け渡し請求をすることとしている。またこれらの対応においては、必要に応じて公営住宅申し込み窓口の紹介や、福祉事務所との連携をおこなうなど、機械的な処理にならないよう、個別の生活事情を勘案している。

 【市町村合併について】市町村合併は、市町村や住民が自主的・主体的にとりくむことが重要。また自民党総務部会の中間報告や、第二十七次地方制度調査会の西尾私案についても、それぞれの場において議論のたたき台のひとつとして活用されるものと期待している。

 【首相への企業献金について】私が代表をつとめる自民党支部に対する寄付についての報道があるが、これは特定の選挙資金ではなく、一般的な政治活動資金として受け取ったものと承知している。これについては、政治資金規正法にそって適正に処理がなされている。

 【自民党の企業献金に対する姿勢について】自民党長崎県連の浅田前幹事長らが公職選挙法および刑法違反容疑により逮捕された事件については、現在当局において捜査中。自民党においても、本件について調査を開始したところであり、できるだけ早く調査することが必要だと考える。

 【公共事業受注企業からの献金禁止について】自民党において現在検討がすすめられており、一歩でも前進するような措置を講じたい。

 【自民党の政党助成金について。政党助成金の廃止について】政党助成金制度はいわば民主主義のコストというべき政党の政治活動の経費を国民全体が負担するものであり、民主主義の発展に重要な意義をもつと考える。ご指摘の点については各党・会派で議論していただくべき問題。

 【イラクに対する国連査察の継続およびイラク問題の平和的解決について】イラク問題の解決のためには安保理をはじめ、国際社会が協調してきぜんたる態度を維持し、イラクが査察に全面的かつ積極的に協力するよう求めることが何より重要。わが国としてその外交努力を継続していく。

 【イラク問題をめぐるわが国の態度について】米国は対イラク軍事行動を決定したとは言っていない。また、わが国は米国より具体的な支援要請も受けていない。わが国としては査察の状況、安保理の議論等今後の事態の推移を注視して対応を判断していく。

 【イラク攻撃のもたらす被害について】重要なことは、イラクが査察を単に妨害しないだけでなく、自ら能動的に疑惑を解消し、大量破壊兵器の廃棄をはじめとするすべての関連安保理決議を誠実に履行すること。それが実現できれば、平和的解決が達成される。


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