2003年2月12日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 政府提出予定の労基法「改正」案に、不当解雇もお金を払えば容認する内容が盛り込まれそうだと聞きました。どういうことですか。(東京・一読者)
〈答え〉 労働基準法改定など解雇「ルール」関連法案を作成していた厚生労働省は二月十日、法案要綱を同省労働政策審議会に提出しました。法案は三月上旬に国会提出の予定ですが、法案のもとになる昨年十二月の労政審「建議」(「今後の労働条件に係る制度の在り方について」)は、会社が金銭さえ支払えば不当解雇も認めるなどの制度改悪を盛っています。
日本では労働者の長いたたかいを経て「整理解雇の四要件」などの判例が確立しています。四要件などを満たさない解雇は無効となり、労働者は雇用契約上の地位が確認され、会社は賃金支払いなどを命じられます。
「建議」は、判例を認めるかのように、正当な理由のない解雇は無効との規定を労働基準法に明記するとしています。しかし裁判所が不当解雇と判断しても、使用者が金銭の支払いを申し出て、「雇用関係を継続しがたい」などの要件を満たせば、「契約を終了させ、使用者に対し、労働者に一定の額の金銭の支払いを命ずることができる」との「救済手段」を提起しています。不当解雇した会社が一定額を払えば、労働者の雇用契約上の地位も消滅させる“契約打ち切り”までできることになります。労働者の地位を保護した判例からの大幅な後退です。
たとえばいま、会社分割や別会社化による退職強要が横行しています。会社が“仕事は別会社に移った。当社にはもう仕事がなく「雇用関係を継続しがたい」”などと主張し、若干の金銭支払いで雇用契約を打ち切れるのなら、いま以上に乱暴なリストラが横行しかねません。
「建議」には、長時間労働を野放しにする裁量労働制の拡大や要件緩和、三年雇い続けても解雇できる有期労働契約長期化なども盛られています。「働き方に係るルールを整備」するどころか、実態は財界いいなりの解雇促進法です。
(博)
〔2003・2・12(水)〕