日本共産党

2003年2月18日(火)「しんぶん赤旗」

映画再生へ今何が

文化庁懇談会「中間まとめ」をみる

国の総合支援・フィルム保存を提起

製作、養成、普及など議論が必要


 日本映画の支援策を検討してきた文化庁の「映画振興に関する懇談会」が、一月三十一日に「中間まとめ」を発表しました。文化芸術振興基本法で映画支援を講ずることとされた後だけに、国が日本映画再生のため、どのような支援にふみ出すべきか、懇談会の論議が注目されています。

 「中間まとめ」は、一方で、国に映画への総合的な支援を求め、映画保存については抜本策を提起しました。しかし、製作や人材養成などについては、さらに論議を必要とする内容となっています。

 「中間まとめ」は、「映画振興の基本法的方向」として、国に「製作、配給・興行から、保存・普及、人材養成まで…総合的な振興方策」を求め、それを「推進する機関」の必要性を指摘しています。この方向で抜本的方策にふみ出せば、省庁バラバラであったり、製作支援以外はほとんど十分に行えていない現状の映画行政を変えうる考え方です。

 そして、映画フィルムの保存について、国内で製作された映画作品すべてを「文化遺産」として位置付け、東京国立近代美術館フィルムセンターへの納入を義務付けるなど、同センターの独立を視野に入れた抜本的拡充を提唱しています。同センターについては、これまで映画人や日本共産党国会議員団が、調査・懇談を重ね、抜本的な改善を要求してきました。

 そのほか、撮影所への支援など、個々には映画人の要望を反映した記述や施策がもりこまれています。しかし、製作や人材養成などの柱については、抜本策が正面にすわっているとはいえません。

 製作支援については、「既存の製作助成事業の統合・メニュー化」などを掲げた「当面の策」と、公的融資の導入や民間からの投資の促進などを掲げた「中長期的な」方策とを分けています。こうした支援をどこが行うかという問題で、分科会段階では、製作支援のための「独立機関」の設立が、参考資料としてあげられていました。「中間まとめ」からは姿を消したものですが、日本映画の危機的現状からみて差し迫った課題です。

 人材養成について、プロデューサー等を養成する「専門職大学院」の創設に向けて文化庁が「協力」するとのべていますが、日本映画製作者連盟なども要望している、映画人を養成する国立映画アカデミーについてはまったく触れていません。国立の養成機関の設立は、隣の韓国や映画先進国フランスなどの例をあげるまでもなく、今や国際的常識といえるのではないでしょうか。

 今日、郊外型のシネマコンプレックス(複合型映画館)が増え続ける一方で旧来の映画館が姿を消しています。首都圏や都市では多様な映画が封切られながら、地方では映画に接する機会さえ無いというはなはだしい不均衡状態です。「映画の普及」について触れるには、その現状のなか、各地で映画に接する喜びを広げている自主上映や鑑賞の運動への正当な目配りがほしいところです。

 日本映画製作者連盟発表の「映画概況」によると、昨年の邦画と洋画の興行収入の比率は、27・1%対72・9%で、邦画収益の占める比率は、ここ十年で最低。こうした数字を見ても日本映画の抜本的振興策が急を要していることがわかります。

 大ヒット作が一本あるかないかで日本映画界の好・不調が左右されるのではなく、市場に強いアメリカ映画に席巻されるのでもなく、「日本映画の可能性」が本当に発揮されるための、総合的で抜本的な施策が今こそ求められています。また、施策のすすめ方についても、映画人が力を発揮する独立の機関を設定することが、行政の活動への介入を防ぐ意味からも重要です。

 「中間まとめ」は、三月に発表予定の「提言」を前に、意見を聴くため取りまとめたもの。映画各界からの率直で広範な論議が待たれます。(児玉由紀恵記者)


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