2003年2月22日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 いま政府などで論議されている医療分野への株式会社参入はどんな問題がありますか。(福岡・一読者)
〈答え〉 いまの日本の医療制度は株式会社など営利法人形態の病院経営を禁止しています。各種病院の基準などを定めた医療法の第七条は「営利を目的として」病院などを開設しようとする者に、都道府県知事は「許可を与えないことができる」としています。また第五四条は「医療法人は、剰余金の配当をしてはならない」と定め、病院などで出た剰余金(経費や借入金返済などの後に残った利益)は、医療の向上や医療従事者の待遇改善などにあてるべきものとなっています。
これは、すべての国民に健康な生活を保障した日本国憲法が施行されてまもない一九四八年に制定された医療法が、生命や身体にかかわる医療は営利を目的とすべきでないという考え方に立っているためです。
ところがいま、「構造改革特区」などを突破口にして医療分野に株式会社を参入させようとする動きが、自民党勢力や財界などの間で活発化しています。資本や経営面での競争で医療の「質の向上」「効率化」をはかるというのが口実です。昨年は国民の反対世論などによって導入が見送られたものの、政府の総合規制改革会議などは依然、医療への株式会社参入を「最重要課題」と位置付けています。
しかし、株主による利益配分を最終目的とした株式会社などは、本質的に利潤の最大化をめざした行動を伴います。医療分野で人件費圧縮や不採算部門切り捨て、高収益部門への集中などの競争が行われれば、地域で採算の難しい精神科、小児科などを担っている病院も撤退に追い込まれかねません。厚生労働省も指摘していますが、医療分野で株式会社などを認めているアメリカでは、営利法人経営の「高配当を求めて、利益のあがる患者のみを選択」「組織的な不正請求」などの行動が地域医療をゆがめ、社会問題となっているのが現実です。
(博)
〔2003・2・22(土)〕