2003年3月1日(土)「しんぶん赤旗」
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国会に提出された国立大学法人法案は、国立大学の設置、権限、機構などをすべて大改変するものです。
法案は、大学の設置者を「国立大学法人」にすることで、国が大学の財政負担を負うという国立大学の制度を根本から解体します。文部科学省自身が「法人化後も設置者は国」とした「最終報告」(調査検討会議、二〇〇二年三月)に真っ向から反し、「財政面を含む国の責任が一層明確になるような工夫を」(山形大学学長)という大学側の意見もほごにするものです。
全国一律だった学費は、各大学法人が決めることになります。国の財政責任が後退するので、自己財源を確保するため学費値上げは必至です。文科省は、現在五十二万八百円の授業料を七十万六千円に引き上げる案を国大協に示しています。
また、法人化は、大学の学問研究を国家統制する制度です。
文科大臣が、各大学にゆだねられるべき教育研究の向上などについて「中期目標」(六年間)を決めます。その際、「最終報告」では各大学の原案を「十分に尊重」としていましたが、法案では、大臣は大学の意見に「配慮」(第三〇条)するだけであり、別の目標を強制することができます。国が、大学の目標を決めるなどという制度は、外国にはほとんどありません。
そのうえ文科省の評価委員会が、「中期目標」の達成度を検討し、評価にもとづき予算を配分します。目標の決定とその達成度評価、予算配分をすべて国がにぎることになります。
大学法人の運営体制は、「大学の自治」を支えている民主的運営を破壊するものです。教授会は教員人事権を失い、学長のトップダウンのもと学外者が大学経営に参加する制度です。「学外者」とは、企業家などが想定されます。
国立大学は、国民の共同財産です。「教育は国家百年の計」にふさわしい国民的論議を尽くす必要があり、国はただちに法案を撤回すべきです。
浅尾大輔記者