2003年3月2日(日)「しんぶん赤旗」
文科相の諮問機関である中央教育審議会(鳥居泰彦会長)は、教育基本法の大幅な見直しを盛り込んだ最終答申を三月中に出そうとしています。三日に開く基本問題部会は、その素案を提出する予定です。駆け足審議で、重大な論点について十分議論を詰めないまま、事務局である文科省主導で突っ走っています。
中教審は、昨年十一月の中間報告提出後は、一月末まで、地方公聴会と関係団体からのヒアリングをしてきました。議論を再開したのは二月四日。その後、週一度のペースで会議をしてきました。
この間の審議は四回、合計八時間半。そのなかで、(1)教育基本法の前文をどう見直すか(2)教育の基本理念として何を盛り込むか(3)宗教教育(4)学校教育の役割の規定――の四点を論議。それぞれ約二時間の審議で終わらせてきました。
これらはいずれも基本法の性格にかかわる重要な問題で、中間報告までには煮詰めきれず「引き続き検討していく」とされたものです。ことに「前文」の扱いは、「後で改めて検討する」と先送りされ、中間報告までは論議されていません。憲法と教育基本法の一体性を明示し、教育の基本理念をうたった前文をどうするかは、教育基本法の根幹にかかわる問題です。
ところが再開後の論議は、時間不足でまったくの駆け足。とくに前文や学校教育の役割規定の論議は、大まかな意見交換や賛否両論の主張を出し合うにとどまり、意見がまとまったわけではありません。
それにもかかわらず事務局は「中間報告に沿って」という言い方で、強引に素案をまとめ、最終答申にもっていく構えです。
中教審は一月末で前期の委員の任期が終わり、新委員になりました。留任が多く顔ぶれはあまり変わらないなかで、周囲を驚かせたのは、一月まで文部科学事務次官だった小野元之氏(日本学術振興会理事長)が、臨時委員になったことです。諮問側の事務局責任者だった人が、今度は答申する側に座っているのです。答申が事務局主導であることを、文科省自身、隠す気もないことの表れです。
三上昭彦・明大教授の話 中教審は教育基本法を「教育の根本法」だと言いながら、きわめて拙速で粗雑な審議で、答申を出そうとしている。子どもの権利条約など国際的な教育の準則や、教育学の専門的、実証的研究の成果を踏まえた議論が欠落している。とるべき最低の手順、作法を踏んでいない。「国民的論議が不可欠」と言いながら、答申提出に向けた強引な日程は、まったく政治的なスケジュールというしかない。