2003年3月6日(木)「しんぶん赤旗」
政官界をゆるがした贈収賄事件・リクルート事件の中心人物である江副浩正・元リクルート会長への有罪判決が出た四日、自民党の坂井隆憲衆院議員の政策秘書らが政治資金規正法違反で逮捕されました。リクルート事件発覚から十四年経っても「政治とカネ」問題をめぐる腐敗事件に終わりがこないことを印象づけました。
同事件は、坂井氏が人材派遣会社などから受けた一億二千万円の献金(一九九七年から五年間)を政治資金収支報告書に記載せず、裏金処理した疑い。坂井氏は党政調副会長や税調幹事など要職を務め、労働政務次官や内閣府副大臣を歴任しており、こうした職務との関係を含め事件の全容解明が必要です。
こうした疑惑事件が絶えないのは、自民党が金権腐敗の大もとである企業・団体献金にメスを入れず、聖域にしてきたからです。リクルート事件では、腐敗根絶を求める世論を逆手にとって「政治改革」と称し、小選挙区制と政党助成金制度導入を強行。その後も、政党への企業・団体献金を見直すとした政治資金規正法の付則条項を棚上げし、政党助成金と企業献金の二重取りを続けています。
鈴木宗男衆院議員、加藤紘一元自民党幹事長、井上裕前参院議長らの逮捕・辞職が相次いだ昨年、小泉首相は公共事業受注企業からの献金規制を指示しましたが、いまだ結論は出ていません。それどころか自民党の政治資金に関する有識者懇談会がまとめた提言は「政治献金が企業の社会的役割を果たす」と企業献金を全面肯定しています。
しかし、今年二月に無配状態での熊谷組の献金を違法とする判決を出した福井地裁判決は、企業献金について「政党に及ぼす影響力は個々の国民による政治資金の寄附に比してはるかに甚大である」と指摘。政党の政策が献金によって左右されれば「選挙制度の意義を否定し、その根幹をも揺るがすことになりかねず、政党政治そのものへの批判にも結びつく」としています。
そのうえで、企業献金の規模によっては「国民の有する選挙権ないし参政権を実質的に侵害するおそれがあることは否定できない」と断定。「政界と産業界との不正常な癒着を招く温床ともなりかねない」とのべ、企業・団体献金を「謙抑的」―行き過ぎないようにと求めているのです。
自民党は一月、棚上げしていた有識者懇談会提言の論議を政治制度改革本部で再開しましたが、公共事業受注企業の献金禁止には「すべての企業献金禁止につながる」との反対論が根強く、具体化は進んでいません。
自民党長崎県連の違法献金事件を受けて執行部が行ったのは、公共事業にかかわる献金の規制でなく、いかに法をすり抜けるかを目的に公選法の解釈を整理して各都道府県連に配ることでした。汚職腐敗にピリオドを打つ姿勢にほど遠いといわざるを得ません。(古荘智子記者)