2003年3月6日(木)「しんぶん赤旗」
ペルシャ湾岸のカタール(人口約五十二万人)は、米英軍がイラク攻撃の際、前線司令部となるアズサイリヤ基地を抱えます。米軍が臨戦態勢を強めるなか、基地からわずか十五キロの首都ドーハの市民の間で緊張感が強まり、商店街、喫茶店などで聞いた市民からは、反戦・平和の声と米軍基地への反発が相次ぎました。(ドーハで岡崎衆史)
「戦争に賛成するやつなんかこの地域にいるはずはないさ。大量破壊兵器とか人権とかいったって、米政権はイラクの体制を転覆して米国の都合のいい政権をつくりたいだけなんだ」。衣料品や床屋などの店が立ち並ぶ市中央部のハラジ通りの喫茶店で、チャイ(紅茶)を飲んでいたアリ・ヤシムさん(40)が一気に語りました。近くに腰掛けていた男性(53)も、「罪のないイラク人をなぜ殺さなきゃならないんだ」と憤慨します。
地元の新聞アル・ラヤ紙のアルサイド・アフメッド記者(46)も「戦争は、米軍が石油がでる要衝のこの地域を支配するため今後五年、十年と駐留するため」と、言い切りました。「カタールでは、国民の圧倒的多数が戦争に反対している」。当地の学者、ジャーナリストは口をそろえます。
|
米軍はイラク周辺にすでに二十二万五千人の部隊を展開、今後開戦にむけて二十五万人まで増強するといいます。カタールには、ドーハ近郊のアズサイリヤ基地と同南西部のアルウデイド空軍基地に、約七千人が駐留。二月二十五日には、フランクス米中央軍司令官、翌二十六日にはフーン英国防相が現地入りするなど、臨戦態勢を強化しています。
前線司令部となるアズサイリヤ基地は、約二百六十二エーカーの敷地をもち、約千人の作戦計画スタッフが詰めています。基地周辺は、数メートルの壁とその上に有刺鉄線がはられる厳重な警戒態勢。地元の人もジャーナリストも特別な許可なく近づけません。
|
こうした米軍駐留への国民感情について、前出のアルサイド記者は、「多くの国民がイラク戦争に反対で、ここから出撃する米軍駐留へ反発も強い」と指摘します。「ただ米国からの圧力で政府は駐留を拒否できないのも事実」と同記者は嘆きました。カタールでは、米兵による地元住民などへの暴行や騒音など基地による直接の被害はつたえられません。しかし「一般に基地の存在、米兵の駐留への反発が強く」、戦争となればさらに反発が高まるといいます。
取材をしていてしばしば聞かれるのは、同様に米軍基地を抱えて被害を受ける日本国民への質問と同情、共感の声です。カタール大学で経済学を学ぶ男子学生(18)は、米軍駐留をどう思うのかとの質問に、「日本の記者ならよく分かっているはずだ。日本と同じで、あんなものが存在することを歓迎する国民があるはずがない」と断言しました。