2003年3月6日(木)「しんぶん赤旗」
政治資金の違法処理への関与が濃厚となり、七日にも逮捕される見通しとなった自民党・坂井隆憲衆院議員は、虚偽の収支報告書作成について、了承するだけでなく、自ら指示したり、企業側に裏献金を要請することもあったとされます。企業側がこれに応じた背景には同議員の労働者派遣業界に対する尽力への期待があったとみられ、政業の癒着関係が浮かび上がっています。
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坂井議員の政策秘書塩野谷晶容疑者(38)らは、人材派遣会社「日本マンパワー」(東京都千代田区)などからの献金約一億二千万円を収支報告書に記載していなかったとして政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で逮捕されました。
関係者によると、塩野谷容疑者は事務所の「金庫番」として経理を取り仕切り、裏金づくりについてもウソの報告書作成を主導。坂井議員は報告を受け、了承したほか、具体的な指示を出すことさえあったといいます。
裏献金していた日本マンパワーの小野憲会長は一九九六年ごろ、メーンバンクの変更の相談をきっかけに坂井議員と知り合いました。当時は、派遣業界の規制緩和や人材派遣会社の社会保険料の未納問題などが浮上しており、労働政務次官を務めた同議員の影響力に対する期待感があったとされます。
両者の関係が親密になる中で、坂井議員側は小野会長に裏金づくりへの協力を要請。マンパワーとアデコキャリアスタッフ九州など関係数社からの裏献金は九六年ごろに始まり、提供資金は現金のほか事務所の光熱費や電話代にまで及んでいました。(図参照)
坂井衆院議員の資金管理団体「隆盛会」をめぐる政治資金規正法違反事件で、逮捕された元公設秘書中山求容疑者(51)が二○○一年八月、福岡市内の人材派遣会社の役員を解任された際、坂井議員が同社幹部に対し「九州でも仕事を取ってやったのに」と激怒、解任に反対していたことが五日、関係者の話で分かりました。
同社は「アデコキャリアスタッフ九州」。隆盛会へ裏献金をしていた一社で、坂井議員の同社に対する影響力の一端が浮き彫りになりました。同事件では、東京地検特捜部も同社の資金提供の趣旨や経緯について解明を進めています。
中山容疑者は坂井議員の元公設第二秘書で、一九九七年以降は私設秘書として地元佐賀の事務所を担当していました。
同容疑者は私設秘書の傍ら、アデコ九州の役員も兼任しましたが、同社のコンピューター導入事業に絡み、取引先からリベートを受領していたことが発覚。○一年八月に役員を解任されました。
関係者によると、これを聞き付けた坂井議員が、アデコ九州の幹部に激怒し、「九州で人材派遣の仕事を取ってやったのに」などと解任に強く反対したといいます。
アデコ九州は九九年七月に設立され、隆盛会に裏献金していた人材派遣会社「日本マンパワー」(東京・千代田区)の小野憲会長(71)が代表を務めています。中山容疑者は解任後、アデコ九州などから社員数人を引き抜き、最近、軽作業の人材派遣会社を設立したばかりだったといいます。