日本共産党

2003年3月9日(日)「しんぶん赤旗」

平和の流れ国連に

“中間”6カ国の選択に重み

外信部長 三浦一夫


 七日の国連安保理外相級会合の結果は、戦争と平和をめぐる国際政治の流れをみごとに映し出しました。熱を込めて平和的解決を主張したフランスのドビルパン外相の発言が喝さいをあびた二月十四日の外相級会合のような劇的雰囲気はなかったものの、米英の武力行使論への批判と不同意は完全に議場を圧しました。

世界は歴史的出来事を目撃

 二月十四日以後の一カ月足らずの間に、世界は歴史的出来事をいくつも目撃しました。十五日の地球規模での反戦平和行動とその後も各地でつづく草の根の取り組み。そして、二月二十四、二十五日の百十六カ国が参加した非同盟諸国首脳会議、イラク周辺諸国を含む二十二カ国が参加したアラブ首脳会議、五十七国によるイスラム諸国会議機構(OIC)首脳会議です。

 これら一連の重要な国際会議が確認したのは、「武力不行使、平和解決」(非同盟会議)「査察に十分な時間を与えよ」「イラク攻撃拒否」「戦争回避の努力支持」(アラブ首脳会議)、「武力攻撃拒否、不参加」「国連の枠組みのもとでの平和解決」(OIC)などなど。平和を求める世界の人々の声が国際政治のなかに確実に投射されていった過程でした。

平和的解決の必要を主張

 トルコの議会が小差とはいえ、事前の予想をくつがえしてイラク作戦のための六万の米軍の新規駐留を否決したのはその過程の進行のもう一つのあらわれでした。

 この世界史的流れを実感させた一つが、いわゆる中間派と呼ばれる国々の発言です。今回、これらの国々の多くがより明確に平和的解決の必要を主張しました。それらの主張が、独仏ロ中国などとともに、軍事攻撃によってではなく平和的解決をという流れを形づくるもう一つの原動力となりつつあるのです。

 どっちつかずで動揺している国というような印象も与える中間派などという呼称は適切ではないでしょう。これらの国のほとんどは発展途上国であり、さまざまな形で米国あるいは米国が支配する国際通貨基金(IMF)や米国の同盟国の経済援助や融資抜きには国を維持するのも容易ではない状況にあります。今回かなり明確に戦争反対を表明したパキスタンはテロ報復のためのアフガニスタン戦争で米国の協力を求められ、その見かえりに十億ドルの経済援助を与えられたばかりです。

国際正義の立場を貫く

 これらの国々があえて米国への不同意を表明するのは決して容易ではありません。国連安保理演説も苦渋の選択と熟慮の結果でしょう。それだけに、これらの国々が米国の経済的脅しに遭遇する危険性もおかし、国際正義の立場を貫き、戦争阻止、国際紛争の道理ある解決のために声をあげていることは重要な意味を持つはずです。

 トルコの議会は二百億ドル以上の米国などの経済援助がふいになる危険性をおかして、米軍の要求を退けたのでした。これらの国々の選択の重みをそこに感じないわけにはゆきません。それは、実は今日の国際政治の流れの重みそのものです。

 安保理は米英の「修正案」の討議に入ります。米国は力まかせの巻き返しに出る一方で、国連の手続きを無視して戦争に突入する危険性は増大しています。予断はまったく許されません。しかし、この流れが逆転することはないはずです。

 米国のパウエル国務長官は「戦争を好むものはいない」といいつつ、軍事力行使に道を開く決議案の支持を要求しました。フランスのドビルパン外相は「戦争は失敗を認める」ことだとし、平和的解決が可能なときに戦争に向かう道理はないと強調しました。戦争か平和かをめぐって国際政治が音をたてて流れている今、日本政府の対応は厳しく問われています。


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