2003年3月11日(火)「しんぶん赤旗」
五日にカタールのドーハで開かれたイスラム諸国会議機構(OIC=五十六カ国と一機構で構成)緊急首脳会議は、イラク攻撃完全拒否などを盛り込んだ共同声明を採択しました。声明は、アフリカ大陸から東南アジアまでの広大な地域にまたがり、国の数としては世界の三分の一近いイスラム諸国が、さまざまな意見の違いのあるなか、「戦争完全拒否」「軍事行動不参加」を共通の立場として明示し、問題の平和解決を求めたものとして、画期的でした。
今回のOIC会議は、二月二十六日のクアラルンプールでの非公式首脳会議に続くもので、それ以上の問題での意見一致は疑問視され、分裂や対立さえ予想されていました。
非公式首脳会議は、「外国軍によるイラク侵攻への反対」で一致、また大量破壊兵器査察の継続を求めるドイツ、フランス、ロシアの覚書に支持を表明していました。
OIC会議の前の三日には、湾岸協力会議(GCC=ペルシャ湾岸の六カ国で構成)外相が、フセイン・イラク大統領の退陣を要求するアラブ首長国連邦(UAE)の提案について大枠で支持を表明。UAEが提案を今回のOIC首脳会議に提出すると述べるなど、同案に否定的な他のOIC加盟国との摩擦が懸念されていました。
サウジアラビアのアラブ・ニューズ紙四日付も、今回のOIC会議も失敗に終わることを予想していました。
しかし、会議が採択した声明は、イラクへの攻撃とイスラム国家の安全保障への脅威を「完全に拒否する」と表明し、前回首脳会議よりも強い調子でイラク戦争拒否の姿勢を明示。問題を「国連の枠組みのなかで平和的手段で」解決することを支持し、大量破壊兵器査察の継続を求めました。また、「イラクの安全保障と領土保全を標的にするいかなる軍事行動にも参加しない」とも宣言しました。
フセイン大統領の退陣を求めるUAEの提案は、正式には協議の対象となりませんでした。
採択された声明についてカタールのハマド外相は、会議終了後の記者会見で、「すべてにおいて成功とはいえない」としながらも、「サミットに参加した国は国際社会と国連加盟国の三分の一に当たる。最終声明は、イラク危機を平和的な手段で解決するとの加盟国の強い願いを反映したものになった」と評価。また、「イスラム国家は、国連を通じて、平和的にイラク危機を解決しようという国際世論の側に立った」と述べ、広大なイスラム世界で、イラク戦争完全拒否の共通認識に到達した意義を強調しました。
実際、OICには、すでに米軍戦闘部隊が駐留しイラク攻撃の際、米国が前線基地とするペルシャ湾岸のクウェート、カタール、バーレーンやエジプト、サウジアラビア、パキスタンなど対米関係を重視する国家が多数含まれており、こうした国も含めた戦争拒否の声明採択は政治的に見れば現在の国際政治のなかできわめて積極的な意味をもつものでした。
カタール紙ガルフ・タイムズ六・七日付は、解説記事で「イスラム世界が、平和支持と外交による(イラクの)武装解除達成の表明を再度行ったことは、世界への大切なメッセージ」だと指摘しました。(ドーハで岡崎衆史)