2003年3月14日(金)「しんぶん赤旗」
【ニューヨーク12日浜谷浩司】日本の原口幸市国連大使は十二日午後、国連本部で開かれた安保理公開会合で演説し、米、英、スペインが提案した対イラク武力行使に道を開く決議案への支持を改めて表明しました。さらに、決議案が採択されなければ、国連の権威と実効性に「重大な疑念が生じることとなる」などとしました。
原口大使は、「イラクには最近、多少の進展はみられるものの、国際社会の強い圧力を受けているにもかかわらず不十分」と主張。最近首相特使をイラクに派遣し、「最後の機会を生かして武装解除するよう働きかけた」が「回答は不十分だった」としました。
同大使は、米英が七日に出した修正案について、「国際社会がイラクに一致して圧力をかけ、イラクがみずから武装解除するための真の最後の努力」とし、米国の武力行使必要論に全面的に加担する姿勢を強調しました。
この主張は、一国行動主義の立場から国連の枠外でのイラク侵攻を合理化するブッシュ米政権の主張と同一です。国連決議なしにイラクに侵攻すれば、それ自体が国連憲章に反する違法行為となることを、アナン国連事務総長も指摘したばかりです。小泉政権はあくまで米政権に追随する立場から、国際法の順守も国連の尊重も投げ捨てる姿勢を示しています。
米、英、スペインの決議案は、平和解決の道を強引に閉ざすとして、国際社会から強い批判を受けています。米、英両国も、そのままでは葬り去られることを懸念し、さらなる修正を検討しているとされます。
原口大使の表明は、小泉政権がいう「国際協調」が、米国の立場に追随するものでしかないことを物語っています。
国内外での反戦世論の空前の高まりに押され、イラクへの武力行使に道を開く修正決議案を米国とともに提出していた英国が再修正案を示し、スペインは同案の撤回まで示唆する──。その中で米国が固執する修正決議案の採択を呼びかけた原口幸市国連大使の演説は、イギリス、スペインよりも突出した対米追随姿勢を際立たせました。
「米国のプードル」。米国に付き従う英国のブレア首相は、欧州のマスメディアなどからこう痛烈に批判されてきました。戦争を急ぐ米国にプードルのように従順、という意味です。
英国が示した再修正案は「(イラクに対する)最後通告としての本質に変わりはない」と仏独ロなどからさっそく批判が上がっているものです。しかし、そうした再修正案であっても、ブレア首相がこれを提示せざるをえなかったのは、戦争反対の声が高まる国内世論を無視できなくなったためです。
かたや、小泉純一郎首相はどうか。「世論に従って政治をすると間違うこともある」と、国民の反対世論を無視、敵視しますが、「米国に従った政治」なら、間違いないというのか。米英間にさえ矛盾が生まれているのに、十二日の原口大使の演説では、修正決議案をあくまで支持する考えを表明したのです。
日本政府は、プードルよりも従順なのか──。小泉首相がそういう批判を受けても、仕方ないことです。(E)