2003年3月15日(土)「しんぶん赤旗」
【メキシコ市13日菅原啓】メキシコ市内にあるメキシコ国立自治大学で十三日、イラク戦争に反対する集会が開催されました。米州自由貿易地域構想に反対する学生委員会がよびかけたもので、大学教授や労組代表らが平和解決を訴えました。
同大学のカルロス・ファシオ教授(政治学)は、大量破壊兵器についての明確な証拠もなしに武力行使を主張する米国こそ「真の悪の枢軸だ」と批判し、安保理でのメキシコの態度は「米国を支持するものであってはならない」と強調。人権擁護大学人協会のオスカル・ゴンサレス会長は、メキシコが米国経済に依存していることからさまざまな主権侵害が横行しているが、「戦争反対の投票こそが、失われた主権を回復する勇気ある行動になる」と指摘。メキシコ政府が米国からの圧力をはねのけ、平和のための投票行動をとる重要性を訴えました。
国連安保理の非常任理事国であるメキシコは、武力行使に道を開く米英提案の決議案への最終的な態度を明確にしていない安保理内「中間派」六カ国の一つ。米国のブッシュ大統領やパウエル国務長官から連日のように電話による説得工作がおこなわれています。
メキシコ大統領府のエリソンド報道官は十三日、「大統領は紛争の平和的解決という明確な立場を尊重し続けている」と語りましたが、米国の武力行使を支持するべきだと主張する財界団体を含め、すべてのメキシコ国民の意見を聞いて最終判断する意向であることを明らかにしています。
【ベルリン13日片岡正明】ドイツでは十四、十五両日、大規模なイラク戦争反対の取り組みが予定されています。十三日にはベルリンで在独の米国人グループが四十八時間にわたって戦争反対を訴えるトーク・マラソンを開始しました。
トーク・マラソンには三十人余りの米国人が参加。「ブッシュ米大統領は米国人のために戦争をするわけではない」「反戦のドイツ人を恩知らずの反米だという者がいるが、われわれは米国国民として戦争に反対する」と語りました。
十四日には正午前からドイツ労働組合総同盟(DGB)が中心となって、ハノーバー、シュツットガルト、キール、ライプチヒなど全国各地で十分間の警告ストを行い、戦争反対を訴えます。フォルクスワーゲンやダイムラークライスラーなどの大企業の労組も参加します。
続いて十五日夕、キャンドルを手にベルリン中心部を縦断する人間の鎖をつくります。労組や教会、政党、平和団体が呼びかけています。フランクフルトのラインマイン米空軍基地前での抗議行動では座り込みなどで二十四時間の基地封鎖を行います。
韓国の与野党国会議員三十五人が十三日、対イラク戦争に反対し問題の平和的解決を求める共同声明を発表しました。声明に名を連ねた金槿泰(与党・新千年民主党)、任鍾皙(同)、金洪信(野党ハンナラ党)議員らは、人権・平和問題で積極的に発言してきた政治家です。
声明は、「米ブッシュ政権は、イラクの事態を平和的な方法で解決せよという国際世論に耳を傾けるべきだ」と指摘、「朝鮮半島の平和が世界平和と直結する問題であると認識し、世界各地で起こっている反戦平和運動を支持する」と強調しています。一方、日刊紙・朝鮮日報十三日付によると、韓国政府は十二日、大統領補佐官と外交・安保関係閣僚が出席した国家安全保障会議常任委員会で、対イラク戦争が始まった場合、米国を支援するために五百−六百人規模の工兵部隊をペルシャ湾岸地域に派遣する方針を決めました。
こうした韓国政府の立場について、与野党議員の声明は「米国の友邦であり同盟国である韓国は困難な立場にある」と指摘。韓国内の反戦運動が米韓関係に与える影響を懸念しつつも「しかし、われわれは平和を脅かすいかなる戦争も起こってはならないと確信する」と言明しました。