2003年3月15日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 農家や自営業者の家族の自家労賃が正当に評価されていないと聞きます。どういうことですか。(大阪・一読者)
〈答え〉 近代社会では労働の対価(賃金)を払うのは当然で、それゆえ一般に、会社の従業員に支払われる給与は、会社の必要経費(損金)とみなされ、法人税などの課税対象にはなりません。しかし家族ぐるみで働く農家や自営業者の場合、家族の働き分(自家労賃)は必要経費とみなされず、事業主の所得として課税されてしまいます。所得税法の五六条が、農家や自営業者と「生計を一にする」家族従業者の労働対価は「必要経費に算入しない」と規定しているためです。
これは戦前の「家制度」のなごりが税法に残ったものといえ、欧米では自家労賃を基本的に認めています。また家族従業者を税法上、自分の給与所得がないものと扱うことは、一種の“ただ働き”の制度化といえ、個人の尊厳、国民としての権利保障などの点からも大きな問題です。そのため、家族従業者の給与を税法上の必要経費として認めさせる「自家労賃を認めよ」の運動が続いています。
国民の運動を背景に、一九五二年に、青色申告者の六カ月以上事業に従事している家族について、一定額を必要経費として控除する「専従者控除」が設けられ、六八年には青色専従者控除の限度額が撤廃されました。
しかし、青色申告は税務署が認める「特典」にすぎず、▽所定の帳簿書類を常備▽原則として簿記の知識が必要な「複式簿記」で記帳▽帳簿書類の長期保存−といった条件が課せられ、多くの自営業者には困難です。青色申告によらない白色申告者にも六一年から専従者控除が導入されましたが、現在、八十六万円までしか認められません。
約二百万人の家族従業者の多くは配偶者である女性です。男性労働者の65%という女性の低賃金をただすうえでも、自家労働の正当な評価の確立は重要な課題です。
(博)
〔2003・3・15(土)〕