日本共産党

2003年3月18日(火)「しんぶん赤旗」

ブッシュ政権が亀裂拡大

“米欧対立”の裏側は

孤立を深める戦争強行派


 イラク問題をめぐって米国は、圧倒的な国際世論に背を向け、ひたすら戦争準備を進め、仏独を先頭とする欧州諸国との対立が深まっています。欧州内でも、平和的解決を追求する仏独ロに対し、米国の政策を支持する英伊スペインなどの諸国が対立。しかし欧州世論は対イラク戦争反対が圧倒的多数、戦争強行派は孤立しています。(パリで浅田信幸)

 “欧米の亀裂”の中身は、戦争強行派と査察による平和解決をめざす理性派の対立です。

米の覇権主義押しつけが原因

 安保理でも世界でも理性派が多数であることは、戦争への道を開く米英スペイン共同提案の安保理新決議案が結局多数の支持を得られなかったこと、各国世論調査でも戦争反対が七割から八割を占めていることにはっきりと示されています。

 孤立を深める戦争強行派が“独仏”への攻撃を強め、“米欧対立”をあおっています。

 イラク問題での対応で対立していた仏独と米英との亀裂をさらに深めたのは、ラムズフェルド米国防長官の「古い欧州」発言でした。これに「戦争こそ古い考え方だ」と欧州の世論と政治指導者は強く反発しました。

 反発の深部にはブッシュ米政権の国際外交路線への不信が指摘できます。気候変動に関する京都議定書からの一方的離脱や国際刑事法廷発足への妨害など、単独行動主義と、「テロリストにつくか、われわれにつくか」といった単純な二分法で敵味方を分ける思考方法にたいする警戒です。

 昨年二月、当時のベドリヌ仏外相はブッシュ政権のこの単純思考を「単純主義」だと批判しました。ギリシャのパパンドレウ外相は「欧州の立場は経験と知識、それにアラブ・イスラム世界を含む近隣地域とのより直接的な接触からでたものだ」とブッシュ政権の単純思考を批判しました。

欧州“大国”阻止が米のねらい

 欧州の各国政府は歩調がそろっているわけではありません。一月末、英スペインら八カ国首相が米国のイラク政策を支持する声明を発表したことで、イラク問題をめぐる欧州の亀裂が鮮明になりました。続いて二月初め、他の中東欧諸国十カ国が同趣旨の声明を発表しました。

 八カ国声明の発表は、EU外相理事会が全会一致でイラクの査察継続を求める合意に達したわずか三日後のことで、これに背く内容をもつものでした。

 イラク問題での対応をめぐる欧州の亀裂は、これら中東欧諸国をNATOに迎え入れた米国の意図を浮かび上がらせました。ラムズフェルド米国務長官は仏独を「古い欧州」と中傷した発言の中で、「欧州NATO加盟国全体を見れば、多くの新加盟国があり、比重は東に移動してきている」とのべています。

 仏紙リベラシオンは、「ワシントンの指導者たちは、軍事、外交、経済、技術の面でのリーダーシップに逆らうことができるような『大国欧州』の出現を粉砕することを夢見ている」と批判しました。

戦争強行派を揺るがす世論

 二月初めに仏週刊誌『フィガロ・マガジン』が公表した欧州の世論調査によると、EU十五カ国全体で、米国の一方的な対イラク戦争に反対する声は82%、EUへの加盟候補・希望国十三カ国では75%にのぼっていました。英国では対米追随で際立つブレア政権が支持率の低下と与党労働党議員の離反に苦しんでいます。二月二十六日、英下院でのイラク問題をめぐる表決では政府提出の動議が可決されたものの、労働党議員の三割にあたる百二十一人が反対動議に賛成しました。

 一方、八カ国声明でブレア英首相と文案を作成したと伝えられるスペインのアスナール首相の与党国民党は二月末、ラジオ・カデナセルの世論調査によると、政権についた一九九六年以来初めて支持率で野党の社会労働党に追い抜かれました。同国では米国の一方的な対イラク戦争に反対する世論は国民の93・5%、国連の容認があっても反対するとの回答は77%に達しています(ムンド紙二月二十二日付)。

世論に背く行動選挙で問われる

 英スペインと並ぶ欧州の対米追随派イタリアのベルルスコーニ政権も、85%に達する反戦世論(コリエーレ・デラ・セラ紙二月十四日付)と、二月十五日の三百万人にのぼる反戦デモの前に、支持率を低下させています。

 スペインとイタリアでは五月に大型の地方選挙を控えており、こうした世論調査を見る限り、与党が敗北か後退を余儀なくされることは避けられそうにありません。


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