2003年3月18日(火)「しんぶん赤旗」
イラクへの武力行使に向け、国連安保理に事実上の「最後通告」を突き付けた米英スペイン三国首脳会談について、査察の継続による平和解決を主張している各国首脳は強く反発し、横暴な米英などの態度を批判しています。
【パリ17日浅田信幸】フランスのシラク大統領は十六日、米テレビのインタビューで、査察の期限をこれまで主張していた四カ月から一カ月に短縮してもよいと打開に向けた姿勢を示したものの、「武力行使に自動的につながる決議案は受け入れられない」と、拒否権行使の構えを改めて示しました。
シラク大統領は、安保理の多数の国は米英の決議案に支持を与えていないと指摘。「フランスは平和主義でも反米主義でもない。拒否権は米国を悩ますために使うのではなく、戦争とは別の選択肢で打開できると信じているだけだ」と強調しました。
ドビルパン仏外相も十七日、自動的な対イラク武力行使に通じる「最後通告」の決議案は「受け入れられない」との見解をあらためて明らかにし、前日の米英スペイン三国の首脳会議を批判しました。ラジオ放送ヨーロッパ1のインタビューに答えたもの。
同外相は「平和的に武装解除することが可能なときに、戦争に進もうとしている」と批判。「いま戦争は必要でない。現場で査察が継続されているからだ」と強調しました。また決議案採択を妨げているのがフランスだとする米英などの激しい非難に対し、「イラク危機は米仏間の問題ではなく、戦争の論理に沿って進もうとする人々と国際社会との間の問題だ」と反論しました。
【モスクワ17日北條伸矢】ロシアのプーチン大統領は十七日、イラク問題に関して、「われわれは、平和的手段による解決のみを支持する。他の道筋は誤りであり、犠牲者の発生と国際情勢全体の不安定化をもたらす」と語り、米英両国などが進めるイラク攻撃準備に懸念を表明しました。クレムリンでロシア南部チェチェン共和国の宗教指導者らと会見した際発言したもの。大統領は「ロシアの立場は明確で、当然かつ不変のものだ」と強調しました。
【北京17日小寺松雄】十七日の中国全人代で新しく選出されたばかりの李肇星外相は同日夜、ロシアのイワノフ外相と電話会談し、イラク情勢について意見を交換しました。
イワノフ外相は「各方面が最大の力を発揮してイラク問題の政治解決をはかるべきだ」と強調。李外相は「戦争か平和かの正念場だ。中国は国連の枠組みの中での政治解決の方針を堅持し、国際社会とともに、戦争回避のため全力をつくす」と表明しました。
【ドーハ16日岡崎衆史】中東歴訪中のフランスのアリヨマリ国防相は十六日、イラク戦争の際、米軍が前線基地に使おうとしているペルシャ湾岸のカタール、サウジアラビアを相次いで訪問し、両国とイラク問題の平和解決を目指すことで一致しました。また同国防相は、これら二カ国と前日に訪問したアラブ首長国連邦(UAE)で、イラク攻撃を回避するべきだとのシラク大統領の親書を各政府に手渡しました。
アリヨマリ国防相は、サウジアラビアのジッダで、アブドラ皇太子(第一副首相兼国家警備隊司令官)、スルタン国防相(第二副首相)らと会談。イラクへの武力行使反対、平和解決で合意しました。
カタールのドーハでは、同国のハマド首長と会談。アリヨマリ国防相は、会談後の記者会見で、「平和のための機会が存在する限り努力し、実現しなければならない」と強調。この点では、カタール側も「極めて近い見解であると感じた」と述べました。
【カイロ16日小泉大介】シリアのアサド大統領は十六日、イランを訪問し同国のハタミ大統領と首脳会談をおこない、米政権によるイラク戦争に反対し、平和的解決を要求する立場を確認しました。
国営イラン通信は会談について、「両首脳は国連決議にもとづきイラク危機を平和的に解決することの必要性を強調し、軍事介入に反対する立場を表明した」、米国に対し「戦争に反対する国際世論を尊重し、武力の行使を良識の言葉に代えるよう要求した」と伝えました。両首脳はさらに、「民主主義は強制されるものではない。イラクの運命はイラク国民自身によって決定されなければならない」と述べ、米国が戦争の口実とする「フセイン体制転覆」とその後の「イラク民主化」政策を批判しました。
【アブジャ16日ロイター】ナイジェリアのオバサンジョ大統領、南アフリカのムベキ大統領およびセネガルのワッド大統領は十六日、国連と米国にあて共同書簡を送り、イラク攻撃のため中東・湾岸地域に展開している米軍の撤退を要求しました。三首脳は、イラクに対するいかなる攻撃も最も貧しいアフリカの経済への打撃となる、イラクは国連安保理決議が要求しているように完全に武装解除されねばならないが、国連決議順守の確認は国連とその諸機関だけによって行われなければならないと指摘しています。
【モスクワ17日北條伸矢】ロシア正教会のアレクシー二世総主教は十七日、声明を発表し、「当教会は、(対イラク)軍事作戦に反対している各国政府や宗教・社会運動指導者らの努力を支持し、この戦争を正当化する試みを拒否する」と訴えました。
ロシアでもイラク攻撃に対する反対世論が高まっており、数千万人の信徒を擁するとみられるロシア正教会の最高指導者が戦争反対を表明したことは大きな意味を持ちます。
声明は「イラクにおける戦争は何の罪もない死者や被害者を大量に生むだろう。子ども、女性、高齢者に被害が及ぶのが常だ」と指摘。石油施設の破壊による環境汚染の可能性にも言及しています。
また、世界各国政府に戦争回避の努力を続けるよう呼びかけ、「地球上に住む大多数の人びとの意見に耳を貸さずに(軍事)行動に及べば、既存の国際法のシステムが破壊される」と強調。「聖書の地イラクが戦火から救われるよう神に祈っている」と結んでいます。