2003年3月19日(水)「しんぶん赤旗」
【ワシントン17日遠藤誠二】内外の批判を無視し、ブッシュ米大統領は十七日夜、ホワイトハウスから国民に向けて演説し、フセイン大統領とその息子たちに四十八時間以内に国外退去するよう要求、それに従わない場合には、イラクに対して軍事侵攻をおこなうとの「最後通告」を突きつけました(演説要旨は6面)。米英スペイン三カ国は同日午前、武力行使に道を開く国連安保理への新決議提案を撤回しており、ブッシュ大統領は最後通告の根拠に安保理決議一四四一をあげたものの、同決議にも軍事攻撃を正当化する内容はなく、もし戦争に踏み切ればまったく無法な軍事行動となります。
ブッシュ大統領はこの演説で、サダム・フセイン政権は、米国民や他国の国民にとって「危険であることは明白である」と主張。さらに「アメリカはみずからの国家安全保障を確実にするために、武力を行使する主権を有する」などとして軍事攻撃を正当化しようとしています。
さらに、ブッシュ大統領は、フセイン大統領が国外退去を拒否すれば「われわれの選択した」時間に戦争を開始すると言明しました。
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小泉純一郎首相は十八日午後、ブッシュ米大統領のテレビ演説を受け、「アメリカがイギリス、各国と共同して武力行使に踏み切った場合、日本政府としてその決断を支持する」と国連決議なしの武力行使に明確な支持を表明しました。首相官邸で記者団の質問に答えました。
これに先立ち首相は、自民党五役、公明・保守新の与党党首と相次いで会談。この方針を伝え、与党側も了承しました。
小泉首相は、態度表明のなかで、ブッシュ大統領の最後通告についてただちに「やむを得ない決断だった。米国の方針を支持する」と表明。武力行使支持の態度について「日米関係の信頼性を損なうことは、日本の国家利益に反する」などと合理化。「フセイン政権に武装解除の意志がないことが断定された」などとのべました。
【ニューヨーク17日浜谷浩司】イラク侵攻を決断した米国、英国およびスペインは十七日の国連安保理で、武力行使容認を求めた新決議案の取り下げを通告、軍事力行使の方向を明らかにしました。これに対してフランス、ロシア、ドイツは、戦争を阻止し、査察を通じた平和的解決を最後まで追求する姿勢を示しています。これら三国の要求で安保理は非公式会合を十九日に開くことを確認しました。
ドラサブリエール仏国連大使とプロイガー独国連大使は、安保理後の会見でともに査察の継続を主張。シリアやパキスタンの国連大使も、外交努力を続ける用意を表明しました。
決議案を取り下げたことについて、パウエル米国務長官は「一部の常任理事国が拒否権を行使することが確実なためだ」と、フランスをやり玉に挙げました。
これに対し仏国連大使は「平和的手段でイラクの武装解除を進めているさなかに、武力行使を認めることはできないというのが、多数の理事国の立場だ」と指摘しました。
一方、アナン国連事務総長は同日の安保理で、イラクで活動している査察団をはじめとする国連スタッフに出国を指示したと報告。記者団の質問に「平和的解決を願ってきた」と述べ、米国などの決定に「失望」を表明しました。