2003年3月19日(水)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 石原都知事の暴言で問題になっている、憲法九九条の「憲法擁護義務」とはどういうものですか。(東京・一読者)
〈答え〉 フランス革命の一七九一年憲法以来、世界の多くの憲法は、国政担当者や公務員に憲法擁護義務を課したり宣誓を求めたりしています。こうした人々が憲法をないがしろにすれば重大事態となるからです。日本国憲法九九条も、国政担当者や公務員は「この憲法を尊重し擁護する義務を負う」としています。政治に携わる人々に、憲法を守り、さらに「憲法違反行為を予防し、これに抵抗」(佐藤幸治ほか共著『注釈日本国憲法』下)する義務を課したものです。一般には、憲法違反に対する弾劾制度などがある国とは違い「道徳的・倫理的」義務を示すと理解されています。
ただし公務員には法律上、憲法を暴力で破壊すると主張する政党の加入者は就任できないなどの欠格条項があります。公務員は法と政令、条例で憲法擁護の宣誓が必要で、東京都なども「日本国憲法を尊重し、且つ、擁護することを固く誓います」と宣誓書様式を定めています。これらは九九条の徹底です。
最近では一九九九年に「日本人は憲法を改正できないでもがいている」と放言した中村正三郎法相など、憲法を攻撃して政治責任を追及され辞職した閣僚は少なくありません。しかし昨年十二月都議会での石原慎太郎都知事の答弁は、憲法九六条の改正手続きまで「無視して」改憲を進めることを主張した点で、違法性はより重大です。九九条の意味は(1)改正されるまでは憲法を尊重・擁護しなければならない(2)九六条の「改正」以外の方法で憲法を変更してはならない―との指摘(佐藤功・ポケット注釈全書『憲法』新版・下)のすべてに反します。
ましてや今年三月の「九九条違反で結構」との答弁は、世界で普遍的な制度である憲法擁護義務自体への攻撃で、政治家たる資格も失わせるものです。憲法擁護を誓約した公務員の長としても不適格です。
(清)
〔2003・3・19(水)〕