2003年3月21日(金)「しんぶん赤旗」
国連憲章が定めた平和のルールをことごとく乱暴に踏みにじる無法者への仲間入り−−。小泉純一郎首相が二十日に行ったイラク戦争への支持表明は、そういう許しがたい宣言でした。
「ブッシュ米大統領は、(今度の戦争は)イラク国民に自由を与え、将来豊かな生活を築き上げる作戦だと言っている。私もそう思っている」。首相は会見でのべ、「日本としてもこのブッシュ大統領の方針を支持していく」と表明。「フセイン大統領の退陣」という「米国の立場も支持している」と言明しました。
政府がこれまで強調し、首相がこの日の会見でも繰り返した、大量破壊兵器の廃棄という目的さえ踏み越え、イラクのフセイン政権転覆という米国の無法な戦争目的まで無条件に丸ごと支持したのです。
首相は「(イラクの)武装解除とフセイン大統領の退陣はほぼ同じ意味を持つ」と強弁しました。しかしそれで、他国の主権尊重、内政不干渉という、国連憲章の大原則をじゅうりんする無法行為への支持を合理化することは決してできません。
首相は同日の会見でも、米国の戦争を正当化する根拠として「イラクは(大量破壊兵器の廃棄、武装解除に)協力してこなかった」ことしか挙げられませんでした。
十九日の党首討論で日本共産党の志位和夫委員長が「フセイン政権に武装解除の意思がないとだれが断定したのか」と追及したのに対し、首相が答えることができなかったように、「そう断定しているのは米国だけ」(志位氏)です。結局、戦争を支持する根拠は何もなく、米国言いなりの、従属国の哀れな姿を今回もさらしたのです。
首相は「日米安保条約、日米同盟関係の強い信頼のきずなを基盤としながら、日本国民の安全確保に十分な努力をしていかなければならない」とも強調しました。しかし、「日本国民の安全確保」のために罪なきイラク国民の命を奪っていいのかという、だれもが抱く疑問への答えは一切ありませんでした。
首相は国会への報告で「アジア地域の平和と安全の確保にとっても米国の役割は不可欠」と指摘。「米国が国際社会の大義に従って大きな犠牲を払おうとしているとき、わが国が可能なかぎりの支援を行うことはわが国の責務」とまで言い切りました。
それは、米国が今回イラクに対して行った、国連憲章が厳しく禁じる先制攻撃を、アジアでも認めることにつながるきわめて危険な論理です。「日本国民の安全確保」にも「地域の平和と安全」にも反するものです。
首相の表明は、国連憲章の平和のルールを踏みにじる「日米同盟」への変質を決定的にしたものとして、許すことはできません。
(榎本好孝記者)