2003年3月22日(土)「しんぶん赤旗」
ブッシュ米政権とこれに追随するブレア英政権がイラクに対する無法な侵略戦争を開始した翌日の二十日、世界の多くの政府が抗議と反対、一日も早い軍事攻撃の停止を求めて声明などを発表するとともに、各地で市民の戦争の即時停止を求めるデモや集会が続けられました。
とくに欧州では英国やイタリア、スペインなど政府が戦争を支持している国で大規模な抗議行動が始まっているのが特徴。イタリアなどでは労働者の時限ストを含む行動で多くの市民が街頭に繰り出しています。また各国で、高校生たちが朝から授業をボイコットして行動に立ちあがるなど若者が抗議の先頭に立っています。
米国では首都ワシントンだけでなく全国五百カ所以上で反戦緊急行動が繰り広げられました。
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【パリ20日浅田信幸】欧州各国で二十日、同日未明に開始されたイラク戦争に抗議する行動が広範に取り組まれ、「戦争反対」の強い意思を示しました。
パリでは二十日夕の集会とデモに主催者発表で七万人が参加しました。朝から授業を放棄して抗議行動に立ち上がった高校生たちが行動の先頭を切り、午後はパリ全域の統一した二万人のデモが行われ、米大使館に近いコンコルド広場へ。同広場には、夕方になって仕事を終えた労働者や一般市民が労組や政党、平和団体の呼びかけにこたえて続々と集まりました。
イタリアでは、ローマ、ミラノ、ナポリなどでまず若者たちが街頭に結集、抗議行動を開始。ミラノでは最終的な主催者発表で十五万人がデモ行進、ローマでは数万人が米大使館近くで抗議行動を繰り広げました。デモでは「イラクがブロッコリーの生産国なら、戦争はなかったはずだ」などと書かれたプラカードをもった参加者もいました。同国では三大労組が二時間のストを提起し、すべての学校で最終時限が放棄されました。また多くの工場、公共部門がストライキを決行し、都市交通もストップしました。労働者らはベルルスコーニ政権に対し戦争支持の立場を変えるよう求めました。
スペイン・マドリードでは五万人以上が市中デモを行いました。バルセロナでは大学生、高校生を中心に一万二千人が米領事館前で抗議行動を繰り広げました。抗議行動では、対米非難とともに、アスナール首相の辞任を求めるスローガンが叫ばれました。
ギリシャのアテネでは十万人の大学生、高校生が市内を行進しました。
またスイスでも首都ベルンで一万人、ジュネーブ八千人、チューリヒ八千人など全国の約三十都市で行動が行われました。
ポルトガルのリスボンで千人、スウェーデンのストックホルム一万人、フィンランドのヘルシンキ三千人、ベルギーのブリュッセル三千人、オーストリアのウィーン八千人、チェコのプラハ一千人と各地で戦争の即時中止を求める行動がおこなわれました。
ノルウェー、デンマーク、オランダ、ポーランドの各国首都でも抗議行動が取り組まれました。
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【ベルリン20日片岡正明】ドイツでは二十日、全国で六百八十の集会・デモがおこなわれ、参加者二十万人以上がイラク戦争に抗議しました。
ベルリンでは二万人が集まった昼の高校生デモに続き、夕方には市中心部のアレクサンダー広場で約五万人が集会に参加。「ストップ・ザ・ウオー」「石油のために血を流すな」「ドイツ領空の(米英軍機)通過を認めるな」などさまざまな横断幕を掲げ、登壇した文化人や労働組合の代表などが戦争反対の決意を訴えました。
集会に参加したマルティン・ワルネッケさん(37)は「米国の論理がまかり通れば勝手にどこの国でも攻撃できる。この戦争は国際法違反であり、責任者は戦争犯罪として裁くべきだ」と語りました。
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【ロンドン20日西尾正哉】米英による対イラク軍事行動が始まった二十日、首都ロンドンに五万人が集結したほかイングランド北部のマンチェスター、リーズ、リバプール、ブラッドフォードなど英全土で抗議行動が広がりました。
ロンドンでは議会前の広場に午前中から授業を放棄した高校生など四千人が集結。道路を封鎖して「イラクへの攻撃をやめろ」と抗議行動を繰り広げました。ロンドン北部のラティマ高校からクラスの仲間とともに議事堂前に来たオナ・テイモン君(18)は、「同じクラスの多くは戦争に批判的です。ほとんどが戦争に疑問を持っています」と語りました。ロンドン市内のキリスト教系女子高のマリア・ヘションさん(15)は「罪のない人が殺されるのにとても強く抗議したいので、授業を抜け出してきた」といいます。議会前広場は夕方六時、勤めを終えた労働者などが合流。その数は五万人近くに膨れ上がりました。色とりどりのプラカードや旗を持った市民が駆けつけました。
家族とともに参加したオックスフォード大学で英現代史を教えるヒルダ・キーンさんは、「戦争は米国が決定し、英国は国民の意思に関係なく参加している。この戦争は信じられないほど先を見ない行動だ」とブレア政権を批判。「こんな反対運動は長い間なかった。想像もしていなかった」と語りました。
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【ワシントン20日遠藤誠二】ブッシュ米政権が十九日夜にイラクへの軍事攻撃を開始したことに抗議する行動が二十日、米国内各地で繰り広げられました。
首都ワシントンをはじめ、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、フィラデルフィア、ボストン、マイアミ、ダラス、ピッツバーグなど主要都市はじめ各州で、早朝から夜遅くまで反戦の声が響きました。サンフランシスコでは、数百人が路上でダイイン、ハーバード大学で学生らが授業ボイコット、シカゴでは高校生数百人が「ウオークアウト」とよばれる授業一時参加拒否で野蛮な戦争強行に抗議しました。
ニューヨークでは夕方から、ユニオン・スクエア広場で集会。大雨のワシントンでは正午すぎから、「戦争停止と人種差別終結を今こそ(国際ANSWER)」のホワイトハウス前緊急デモに学生ら数百人が集まりました。
地元の労働組合でつくる「平和と正義のためのワシントンDC労働者連合」の人たち二百人余りは夕方、中心部のコネチカット通りを行進し、「戦争でなく仕事を」「石油のために血を流すな」「米国民は戦争を望んでいない」と唱和しました。午後五時からデュポン・サークル広場で開かれた集会では、地元プリマス会衆教会のヘーグラー牧師が演説、「いままでになかったような反戦行動を築き、政権に圧力をかけよう」とよびかけました。
【ワシントンで遠藤誠二】一昨年九月十一日に起きた同時多発テロ犠牲者の遺族でつくる「ピースフル・トゥモローズ 九月十一日の家族」は十九日、ブッシュ米政権が始めたイラクへの軍事攻撃を批判する声明を発表しました。
声明は、無実のイラク国民が多数犠牲となり、米兵までが「不当な侵略戦争」による危険にさらされると指摘し、「サダム・フセイン(イラク大統領)が野蛮だからといって、米国がおこなう野蛮な行為は正当化されない」「米国が主導するイラクへの戦争は、不法で非道徳で不当であり、無条件に非難する」と痛烈に糾弾しています。
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【モスクワ20日北條伸矢】米英両国がイラク攻撃を開始した二十日、モスクワ市内の在ロシア米大使館前には昼すぎから数百人の市民が集まり、抗議の意思を表明しました。
市内の建築技術大学一年生のイリヤさん(18)とアレクセイさん(18)は雪の降る中、「われわれは侵略に反対する」と書かれたプラカードを持っています。イリヤさんは語ります。「米大使館前に来るのは初めてです。これまで政治的な運動はしたことないけど、世界中で抗議の声が上がっているのをテレビで見て、二人で相談して来たんです」
市内第三六二学校から来た十年生(日本の高校一年生)のアンドレイさん(15)たちは午前中、五百三十三人の生徒全員集会を開いて、「戦争に反対しよう」という決議をあげ、代表十人が校長から許可をもらって大使館前までやって来ました。
「国連の許可なく他の国を攻撃するのは違法だと思います」と語るのはミーシャさん(14)。日本の記者だというと、「日本は戦争に賛成しているんですってね。たぶん、国民の多数は反対しているんでしょう?」と逆に質問されました。
イラク攻撃に部隊が参戦したオーストラリアでは二十日、爆撃開始から数時間以内に、シドニーで二万人、メルボルンで二万人、ブリスベーンで五千人、首都キャンベラで千五百人が抗議行動に参加しました。
ニュージーランドのオークランドでは、約百五十人が、「ブッシュは野蛮な戦争を恥じるべきだ」と訴えました。
フィリピンの首都マニラでも抗議行動がおこなわれました
インドネシアでは前日に続いて二十一日、十都市で反戦集会・デモが行われ、首都ジャカルタでは数百人が英大使館に向かって卵やトマトを投げつけるなどして抗議しました。また、スラバヤで二千人、バンドンで数百人が市内を行進しました。。
ソウルからの報道によると、韓国の全国教授労組に加入している八百十人の大学教授が二十一日、「米国のイラク侵略糾弾、韓国軍派兵反対」を訴える共同声明を発表。「国民の反戦、平和世論がかつてなく高まっているときに、政府が韓米同盟の名のもとに米国の大義名分のない戦争に国民を動員することは道徳的、政治的に非難されるべきだ」と主張しました。
【カイロ20日小泉大介】エジプトの首都カイロの中心広場で二十日、イラク戦争反対、即時中止を求める集会で二万人の市民が「戦争反対。米国は恥を知れ」「戦争をやめさせるためならわれわれはできることすべてをおこなう」などと声をあげました。
野党を中心とした国会議員、弁護士、大学教授、労働者、学生などあらゆる階層の人々が参加しました。多くが米英を非難するとともに、アラブ世界との友好関係より米との軍事同盟を優先し戦争を支持する日本に失望と怒りを表明しました。
この日はカイロ大学でも五千人以上の学生が戦争の即時中止を求め集会を開きました。
【アンマン21日岡崎衆史】イラクに隣接するヨルダンで二十日、米国が開始したイラク攻撃に反対する集会やデモが行われ、二千人近い人々が参加しました。
アンマン市内で開かれた弁護士など知的職業従事者で構成される「専門家組合」(約十五万人で構成)の集会・デモには、五百人を超える人々が参加。「イラク攻撃はアラブ全体への攻撃」などと訴えながら、イラク大使館に向けて行進しましたが、途中で機動隊に阻止されました。
アンマンのヨルダン大学で行われたデモには約千人の学生が参加。ヨルダンではこの日、アンマン北部のイルビッド市でも女性を中心に約三百人が参加するデモがあり、国際社会が戦争を終わらせるため全力をあげるよう訴えました。