2003年3月23日(日)「しんぶん赤旗」
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【アンマン22日岡崎衆史】イラクの首都バグダッド猛爆撃のニュースが流れた隣国ヨルダンの首都アンマン。となりの国というだけでなく、そこに住む親せきや知人も多いヨルダン市民は、バグダッドが炎に包まれる光景をテレビで見て戦慄(せんりつ)し、怒りを燃やしました。
二十二日朝、カタールのテレビ、アルジャジーラの衛星TVの映像でバグダッド炎上のもようを見た青年(23)は、バグダッドには「知人がたくさんいる。心配で眠れなかった」といいながら、怒りをぶちまけました。「あの辺は、大統領宮殿もあるが軍事施設なんかあまりない。ブッシュはとにかく破壊したいのだろう。これは侵略戦争だ。大勢の市民が犠牲になるのは目に見えている」
バグダッドの大学で、農業を学んでいるマフムードさん(25)は、戦争開始直前に車で脱出してきたばかり。憤りを隠さずにいいます。「バグダッドの仲間のことが気になる」「戦争で犠牲になるのは罪のない人々なんだ」
文字通り、国連決議も何もない、超大国の横暴むきだしの戦争です。反戦の声とともに激しい反米感情が、ヨルダン国民の間に一挙に噴き出しています。
【アンマン21日岡崎衆史】坂の多い谷間の町、アンマンはここ数日雨模様。気温は昼間でも十数度と、アラブ地域のなかでもまだ寒さがただよう気候です。
米英軍がイラクにたいする攻撃を開始した翌二十一日は、イスラム教の神聖な金曜礼拝の日。アンマンでは、礼拝を終えた市民は市内で戦争反対を訴えました。地方都市でも大勢の人が街頭に繰り出し、戦争反対、米国批判を訴えました。
アンマン市西部のモスク前で、金曜礼拝を終えて出てきたばかりのオマル・アハマッドさん(35)は、怒りを体全体で表しながら記者(岡崎)にぶちまけるようにいいました。「アラブの感情は完全に戦争反対だ。戦争をするアメリカは敵だ」「石油のために、民間人が犠牲になることを見すごせるはずがない」と強調します。
八歳と五歳の男の子を連れて参加したナセル・オマルさんも、「絶対に許せない」と戦争を進める米国を批判するとともに、「この地域への経済的な影響を心配している」と語りました。
戦争反対、米国などへの批判…。モスク前の市民、街頭で語る人、商店街の店員など、アンマン市内で聞いたほとんどすべての人々から聞かれることばです。
ヨルダン政府はこの日、礼拝後のイスラム教徒がイラク戦争への怒りから暴徒化することを恐れ、アンマン市内の要所に機動隊を配置。デモの規制に努めましたが、一部で反戦を訴える群衆と機動隊の小競り合いが起こりました。
一方、南部の都市マアーンでも、数千人がデモ行進を行い、戦争を厳しく批判するとともに、戦争を終わらせるため、国際社会が努力を強めるよう訴えました。現地からの情報によると、催涙ガス弾を使用する機動隊に対し、デモ参加者が投石で対抗するなど、デモは、騒然とした雰囲気になりました。
英字紙ヨルダン・タイムズの二十一日付一面トップの見出しはこうです。「世界が抗議するなか、米国が率いる部隊がイラクを侵略」。米国などによるイラク戦争を「侵略」と報じています。
アドワン情報相は、同紙二十一日付に掲載された外国通信社とのインタビューで、「状況は重大で、困難だ。イラク国民と周辺地域全体への影響を憂慮している」と述べ、控えめながら、米国の戦争への懸念を表明。アブドラ国王も二十一日、テレビを通じて、「イラク国民の苦しみや惨状を目の当たりにし、あなた方が心を痛め、怒りを感じていることは分かる」としながらも、暴力的なデモを回避するよう訴える異例の国民向け演説を行いました。
イラク戦争開始で、強まるヨルダン国民の反戦と米国批判の声は、どちらかといえば対米関係を大事にする政府も無視できないほどに今、大きく広がりつつあります。
カイロからの報道によると、米軍のイラク攻撃後初の金曜礼拝日となった二十一日、中東アラブ地域で大規模な反米デモが続いています。
イエメンの首都サヌアでは約三千人が「イスラムの青年たちよ、戦争にノー、平和にイエスと叫ぼう」「米国の覇権主義と偽善にノーを」と唱和しながら米大使館近くを行進。警官隊との衝突で十一歳の少年を含む二人が死亡、警官を含め二十三人が負傷しました。
エジプトの首都カイロでも同市中心部のモスクや広場に一万人以上が集結し抗議デモ。政府に米国大使の追放を要求しました。
パレスチナ自治区のナブルスやガザ地区でも反米デモが続いています。
レバノンの首都ベイルートでは、米大使館に向かおうとした数百人の青年を、警官隊が催涙ガスや放水車で阻止。米第五艦隊司令部があるバーレーンでも数百人が街頭に出て、「対イラク戦争に反対する。アラブの統治者たちは反対で一致し、米軍基地を許すべきでない」と抗議しました。
米軍の出撃拠点となっているクウェートでも、礼拝者たちは「イラクはもう十分苦しみを受けている」と、同情の声をあげています。
東は非アラブのイランから西はモロッコまで、イスラム聖職者らは金曜礼拝の説教で戦争を非難し、米国は中東地域の資源を略奪し世界の覇権を求めていると指摘しています。