日本共産党

2003年3月23日(日)「しんぶん赤旗」

ブッシュ米政権の対イラク戦争

先制攻撃戦略を実践

21世紀の平和秩序に挑戦


 ブッシュ米大統領は「サダム・フセインの戦争遂行能力をそぐために選択した」(二十日の宣戦布告演説)として対イラク戦争に突入しました。最後通告となった十七日の演説で「彼らが最初に攻撃をした後に対処するのでは、自衛にならない」とのべました。米国が昨年来繰り返し表明してきた先制攻撃戦略を実践に移したものでした。「テロリストとテロリスト国家は、公式な宣言で適正な通告をおこなって、その脅威を現すわけではない」とのべ、相手側の攻撃がなくても先制攻撃をしかける口実にしました。

 ブッシュ政権が先制攻撃戦略をホワイトハウスの公式方針として全面的に展開したのは、昨年九月二十日に出された「国家安全保障戦略」です。このなかでは、「差し迫った脅威」の概念を、法学者や国際的法律家が定義する「攻撃を準備する陸海空軍の目に見える形の動員」ではなく、「今日の敵対者の能力や目的に適合させなければならない」と規定。そのうえで「敵対者によるこのような敵対的行動の機先を制し、あるいは阻止するために必要とあらば米国は先制的に行動する」と先制攻撃を合理化する戦略を組み立てました。

欧州から批判

 それは実際には、“米国の脅威になると判断したら、いつでも攻撃して当然”という主張です。国連安保理から離れて行動する身勝手な論理は、国際的に認められていません。国連憲章では武力行使が許されるのは、自衛反撃と国連安保理が軍事措置を決めた場合のみです。

 この先制攻撃戦略が出された当時、欧州諸国からはいっせいに批判の論調がだされました。ドイツのフランクフルター・ルントシャウ紙九月二十一日付は「これはイラク攻撃の準備の反映」と指摘。英紙ガーディアンは「米外交の攻撃的な新ビジョン」として、国連や国際世論の反対に直面しても先制攻撃をためらわないものだと指摘しました。

 対イラク攻撃に道を開こうとする安保理決議案を提案した米英スペインが、安保理十五カ国中、提案国を含めわずか四カ国の賛同しか得られずに孤立。これを取り下げた直後に、ブッシュ大統領が対イラク戦争に突き進んだ今回の姿は、まさに欧州諸国の主要紙が予見したそのままです。

国連憲章違反

 先制攻撃への批判が今、二年前の同時テロの標的となった米ニューヨーク市の市議会の意思として出されているのも注目すべき点です。同市議会は今月十二日にイラク攻撃反対決議を採択しました。このなかで「イラクが米国とその同盟国の安全にとって現実の差し迫った脅威をもたらしていると論証されることなしに、イラクにたいする先制的軍事攻撃に反対する」とのべています。

 「テロの脅威」を口実に「イラクの政治体制の転換」をたびたび口にしてきたブッシュ大統領は、いま、フセイン政権の打倒と親米の「民主的」政権の樹立を主張していますが、これは明らかに「内政不干渉」を定めた国連憲章違反です。

 国連を無視したまま、気にいらない政権の打倒を目的にした先制攻撃をしかけていく―。こうした米国の戦略は、二十一世紀の平和の秩序に真っ向から挑戦するものです。(党国際局 西村央)


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp