2003年3月26日(水)「しんぶん赤旗」
「五歳以下の子どもたち十万人が危険な状況になっている」―国連児童基金(ユニセフ)と世界保健機関(WHO)は二十四日、ヨルダンの首都アンマンのホテルで緊急の記者会見を開催。米英軍の猛攻が続くイラク南部の主要都市バスラ(人口百五十万人)で、安全な飲料水の供給停止などの影響で、子どもたちの命が危険にさらされていることに警告を発し、状況の速やかな改善を求めました。
国連のアナン事務総長はニューヨークでこの問題にふれ、「住民に電力と水を供給する緊急の措置がとられなければならない」と強調。戦時における住民の公共サービスと安全については占領軍に責任があるとのべ、米英軍の責任を問いました。
ユニセフのジェフリー・キール報道官は、バスラの水道水の40%を供給するワファアルカイドの水道施設が機能を停止したため、病院を含む同市全体の市民が、三日間にわたって水道水を利用できない状況にあることを指摘。市民は下水が流れ込む川から飲料水を求めなくてはならないといいます。
同報道官は、子どもたちが「下痢や脱水症状などによって死亡する極めて現実的な可能性が存在する」と強調。その上で、「五歳以下の子どもたち、少なくとも十万人が危険な状況に陥ると推定している」と述べました。一方、WHOのファデラ・シャイブ報道官も、バスラの状況について、「安全な飲料水の断絶が健康に与える被害を懸念しており、状況は急速に悪化する可能性がある」と語りました。(アンマンで岡崎衆史)
二十日早朝のバグダッド空爆で始まったイラク攻撃で、米英軍は「標的は軍事施設や政府施設であり、民間人の犠牲を最大限避けている」などと主張していますが、現地ではイラク民間人の犠牲者の数はどんどん増えています。
カタールの衛星テレビ・アルジャジーラは、二十二日に南部バスラで米軍の投下したクラスター(集束)爆弾で市民五十人が死亡、四百人が負傷したと伝えました。二十四日には、前日からの首都バグダッドへの猛爆でイラク人四十五人が死亡、四百人が負傷し、そのほとんどが民間人だとの駐バグダッド特派員の報告を伝えました。
同テレビは軍事施設や政府施設とは関係のない普通の民家が粉々に破壊された状況や、病院に血まみれになった遺体が運び込まれたり、ベッドの上で頭や腕に包帯を巻いた子どもや女性が放心状態で横たわる様子を連日放映しています。
イラクのアルサハフ情報相は二十四日の記者会見で、過去二十四時間における米英軍の空爆が全土にわたり、イラク人六十二人が死亡、四百人が負傷したと発表。これによりイラク当局が発表したこれまでのイラク民間人犠牲者は、死者百四十人以上、負傷者は千人以上となります。
赤十字国際委員会は、空爆開始から二十四日までに独自にバグダッドの病院を調査し約百五十人の負傷者を確認。また同委員会は二十三日、イラク攻撃によりバスラの浄水装置の機能が破壊されたことについても、通常の半分以下しか水が供給されていない状況から、このままでは同地が「深刻な人道的危機」に陥ると警告しました。
民間人犠牲者はイラク市民だけではありません。二十三日早朝には、イラクを脱出するシリア人三十八人を乗せたバスが国境付近で米英軍のミサイルの直撃を受け、五人が死亡、十人以上が負傷しました。シリア政府はこれにたいし「民間人を標的にした恐ろしい侵略」と抗議。米軍のフランクス中央軍司令官も二十四日、この「誤爆」を認めました。
また二十三日には、ヨルダン情報相はイラク北部の主要都市モスルでヨルダン人留学生四人が死亡したと発表。外国通信社は空爆に巻き込まれたもようと伝えました。
さらに米英軍の「誤爆」は隣国にもおよんでいます。米英軍が二十三日発射した巡航ミサイル・トマホーク二発がトルコ領内の無人地帯に着弾しましたが、二十二日にも二発の同ミサイルがイラクと国境を接するイラン領内に着弾しました。イラン政府はこの「誤爆」とともに、イラク空爆の米英機がたびたびイラン領空を侵犯していることも非難しています。
米軍が開戦後の五日間で発射したトマホークはすでに約五百発に達し、湾岸戦争時の約三百発を大幅に上回っています。(カイロで小泉大介)