2003年3月26日(水)「しんぶん赤旗」
【ロンドン24日西尾正哉】英軍はこれまでに、帰還途中の戦闘機が米軍からのミサイルで撃墜されたり、味方同士のヘリコプターが衝突するなどすでに死者十七人、行方不明者二人を出しています。イラク側の反撃で英軍犠牲者が増える中で、英メディアはこの戦争を懐疑的に報じるようになってきています。
英BBC放送は、南部の主要都市バスラなどでイラク側の粘り強い抵抗を受け戦闘が続いていることで「三日前に掌握したとされた地域が、厄介なゲリラ戦の様相を呈してきた」と指摘。米英軍はイラク側の降伏などで開戦後一、二日で南部の諸都市を管理下に置いたと「宣伝」してきましたが、実態は戦闘が続いています。
また同放送は、米英軍が必ずしもイラク市民から歓迎されていないとし、「サダムが必要だ」と叫ぶ女性の映像を放送。「米英軍は市民に敵でないことを訴えるビラを二千四百万枚もイラクでまいているが効果がない」と指摘しました。
二十四日午後七時の「チャンネル4」のニュースは、当初はイラク側の大した抵抗もなく、市民も米英軍を歓迎すると米英政権は見込んでいたものの、現実はそうなっていないと指摘。米英軍の進攻は「イラクの解放ではなく、侵略ではないのか」とニュースのアンカーマンは指摘しました。
レバノンの文化相がこの番組の中でコメントし「アメリカの政府とメディアはイラク人の判断を誤っている。軍隊はたたかわずに降伏するとかイラク人はだれもサダムを支持しないという考えは、アメリカが作り出した推測であり、彼ら自身がそれを信じるようになっている」とのべました。
イラク市民が米英軍を歓迎していないことはウォール・ストリート・ジャーナル紙(欧州版)二十四日付も報道。「米英軍はイラク市民の根深い敵意に直面している」と現地からレポートしています。
同紙は「米英軍は解放者としての歓迎から程遠く、イラク南部で根深い敵意と居住者からの銃撃に直面している」と指摘。バスラ南方のアズズバイでは市民が手りゅう弾を米軍に投げたりロケット砲や機関銃で発砲したといいます。さらに、「教師が米英軍の戦車の隊列が進む中で敢然と立ち、怒りに声を震わせて『われわれはイラク人だ。われわれは祖国を守る。侵略者を打ち破る』と叫んだ」とレポート。国境に近いサフワンでも、米軍の空爆で二人の農夫が殺された現場で、「米英軍はイラク人を殺している。どうして幸せになれるだろうか」と言った農夫の怒りの声を伝えました。