日本共産党

2003年3月27日(木)「しんぶん赤旗」

論戦ハイライト

井上哲士議員追及で実態浮き彫り

裁量労働制

今でもルール違反続々
“緩和”は認められない


 「裁量労働制」を例に労働法制「改正」案の問題点をついた日本共産党の井上哲士議員の質問(参院予算委員会、十七日)。現状でもルールが守られていない実態が浮かび上がりました。


 裁量労働制は、一日何時間働いたかにかかわりなく、労使で決めた時間だけを労働時間とみなす制度です。適用されるのは、仕事のやり方や時間などを自分の裁量で決められる人だけです。

 当初はエンジニアなど「専門業務」に限られましたが、九八年の労基法改悪で「企画業務型」が導入され、事務系労働者にも拡大されました。

 裁量労働制が何をもたらすのか――井上氏は裁量労働制で一日平均十三時間にのぼる労働のすえ二十四歳の若さで過労死した出版会社社員の事例を紹介しました。

 井上 残業代を払う必要がないからサービス残業が合法化される。過労死が後をたたない。

 坂口力厚労相 憂慮している。会社で十分に配慮していただきたい。

 配慮どころかルールさえ守られていない――井上議員は大手電気NECの実態を示しました。

 同社の裁量労働制は、「新Vワーク」と呼ばれ適用者は七千人。うち事務系労働者が千人にものぼる大規模なものです。

 「企画業務型」は、本社など中枢部門で経営戦略に携わる人に限られているのに、「事務系の仕事はみな企画や調査を含む」などといって対象者を拡大したためです。

 労働基準監督署もこれを了解していました。

 井上 会社側は、始業時刻以降に出社する場合は前日に出社時刻を明記せよ、予定時刻に出社しないと厳しく指導するといっている。これでも時間配分を自らにまかされた業務なのか。

 松崎朗労働基準局長 一般的にいってフレックスタイム制のように、その時間帯に出社しなければならないというのは裁量労働制から逸脱する。

 井上 フレックス制だって出勤時間は自由だ。これを認めると歯止めなく無限定にホワイトカラー全体に広がっていく。

 これだけではありません。NECは労働時間の把握を課した厚労省の指針に反していたのです。

 井上 田町地区ではタイムカードもなければ出勤簿もない。休暇などを自己申告するだけで毎日の労働時間は報告項目にすらない。指針違反だ。

 松崎 そういうふうに務めてほしいということで、ストレートに違反というわけではない。

 井上氏は、九八年の国会で労働基準局長が、タイムカードなどチェック体制が整っていない限り「不正な届け出として改善させていく」とのべていることを示して、「なぜ改善させないのか」と迫りました。

 松崎氏も「要件に合致しない裁量労働制をとっていれば監督指導をおこなっている」と答えざるをえませんでした。井上氏は、社会経済生産性本部の調査で、裁量労働制の導入企業の三割が勤務状況を「把握していない」と答えていることを紹介し、一企業の問題ではないと強調しました。

 井上 国会答弁と全然違う。こんなことで労働者の権利、健康を守れるのか。

 坂口 裁量労働制も一定の時間の制約はある。守られていないことになれば、是正しなければいけない。

 動かし難い事実を前にルール破りを認めるとはいえない坂口氏。

 井上氏は「現状でもこれだけ問題があるのに、さらに緩和されるとホワイトカラー全体に長時間労働やサービス残業を押しつけることになる。法案は撤回すべきだ」と強調しました。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp