日本共産党

2003年3月29日(土)「しんぶん赤旗」

イラク戦争は国際法違反の侵略

国連安保理公開協議

米批判の声


 二十六、二十七の両日、ニューヨークの国連本部で、米国などによるイラク攻撃開始後初の国連安全保障理事会公開協議が開かれ、大多数の国が攻撃を国際法違反の侵略だと非難し、停戦を要求しました。(ニューヨークで坂口明)


先制攻撃に強い危機感

 「(非理事国の)七十カ国近くの多数は、彼らが『違法な侵略』と呼ぶものの停止を求め、侵略軍の即時撤退を要求した」−国連本部発表のニュースはこう報道しました。実際、理事国を含めイラク攻撃を批判し、停戦を求める声が圧倒的でした。

 安保理理事国十五カ国のほか、非理事国六十六カ国、アラブ連盟、パレスチナ自治政府の計八十三の代表が発言しました。国連加盟国の四割強にあたります。

 今回の公開協議の開催を要求した非同盟諸国会議とアラブ連盟の参加国が会合冒頭で次々に発言。国連憲章と現行国際法に違反する先制攻撃を許してはならないとの危機感に満ちていました。

 非同盟会議現議長国のマレーシアは、イラクへの「一方的軍事行動は違法な侵略行為だ」ときっぱり弾劾しました。「始まるべきでなかった戦争だから、即時停止すべきだ」と迫りました。

 その上で、「武力不行使と、全国連加盟国の主権尊重・領土保全・政治的独立・安全の尊重という根本原則をすべての国が厳守してこそ、国際の平和と安定は保たれる」と訴えました。

 公開協議では、米国が「有志連合」と呼んでイラク侵攻支持と数える四十九カ国中、米英両国も含め二十六カ国が発言しました。しかし、このうち侵攻を公然と支持する発言をした非理事国は十数カ国だけ。なかでも、もっともあからさまに「支持」表明したのは、日本の原口大使でした。

侵攻事後承認許さない

 今回の会合で大きな論点の一つとなったのが、米国などがイラク侵攻を安保理の承認を得ずに開始したにもかかわらず、それを既成事実化し、事後承認させようという動きです。

 戦争で被災したイラク国民への人道援助を実施するための新たな安保理決議の採択にさいし、侵略を事実上容認させようとする米国などの動きを、非同盟諸国会議前議長国の南アフリカなどが厳しく批判しました。

 米英両国の支持のもとに準備されている新決議案には、攻撃開始に伴い中断されたイラクへの食料援助を再開するにあたり、「関連する当事者」、つまりイラク国内に侵攻して軍事行動する米英両国と協調して援助活動するという規定があります。

 安保理理事国のロシアやシリアも含め、戦争強行に反対した諸国は、こうした表現では、安保理が侵略を既成事実として容認し、侵略を事後承認してしまうことになると批判しています。ロシアとシリアは二十七日の公開協議でも、この問題を改めてとりあげ、「人道問題を利用するな」(シリア)と警告しました。

国連の役割発揮求めて

 「国連って、まだやってるの? ブッシュが戦争を始めたので閉まってるのかと思ってた」−ニューヨーク市内でタクシー運転手は、「国連まで」と頼むと、こう言いました。公開協議では、「イラク攻撃によって国連の存在意義を消してはならない」と多くの国の代表が強調しました。

 アナン国連事務総長も開会あいさつで、「過去数カ月、世界の人々が国連と安保理に多くを期待したが、その多くは今ひどく失望している」と認めました。非同盟議長国のマレーシアは、「イラクへの仮借ない強襲が起こっているのに、安保理は今日まで沈黙を保ってきた。世界の何百万もの人々が、この問題で国連と安保理はどういう立場なのかと不思議に思っているに違いない」と発言。今回の公開会合が速やかに開催されたことを国連の役割発揮の第一歩として歓迎しました。

 安保理は昨年十一月、決議一四四一を全会一致で採択し、イラクの大量破壊兵器問題での査察の再開を合意しました。イラクが全面的に順守しない場合にもイラク攻撃を「自動的」に開始しないことも確認されました。

 ところが米国は、多数の国の反対によりイラク攻撃を容認する安保理決議が採択できないと分かると、査察を強引に中断させ一方的な攻撃開始を強行しました。しかも、他国も支持していると見せかけるため、経済援助供与をちらつかせるなどして旧ソ連・東欧諸国や小国などを抱き込み、侵攻支持の「有志連合」だと宣伝しています。

 「有志」が好き勝手に軍事力を使える世界にしてよいのか、とロシア代表は問いかけて発言を結びました。「(対イラク)戦争は、安保理が失敗したから開始されたのではない」(パキスタン)、「対イラク戦争は(国連による)多国間協力を無効にしない」(メキシコ)−イラク戦争で「国連無用」論を退け、国際平和機構としての国連の役割を今こそ発揮しようとの声が、公開協議で相次ぎました。


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