日本共産党

2003年3月30日(日)「しんぶん赤旗」

ブッシュ無法戦争 <8>

米国の圧力はねかえした

パキスタン


 人口一億四千万人のパキスタンは世界第二のイスラム教国。国連安保理の非常任理事国でもあります。アフガニスタンでの戦争に続いて、米国から対イラク武力行使への支持を強く求められ、難しい立場に立たされました。(イスラマバードで小玉純一)


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アメリカのイラク攻撃に抗議する集会に参加したパキスタンの人々=23日、ラホール(小玉純一撮影)

 パキスタン与党第一党のパキスタン・イスラム教徒連盟(PML)のカタック氏を首都イスラマバードの同党本部に訪ねました。

 「アメリカがパキスタン政府に支持を求めたのはもちろんだ。アフガニスタン戦争のときのようにね」

 同党中央書記で外交担当のカタック氏は「超大国が発展途上国に支持を求めるとはどういうことか考えてほしい」と続けます。

直接間接の経済援助

 「それは自動的に圧力になる。『自動的に』だ。途上国はアメリカから国際通貨基金(IMF)なども通じて直接間接の経済援助を受けている。トルコの事態を見てもよくわかるだろ」

 二月末、首相の経済顧問アジズ氏がアフガン戦争支持の報酬を国会に報告しました。これまで計九億ドルの援助を米、英、欧州連合、日本、サウジアラビアから受け、今後十億ドルの債務帳消しの約束があるといいます。

 国営通信APPを訪ねると、編集幹部は「ブッシュ大統領とパウエル国務長官はパキスタンのムシャラフ大統領らに何回か電話をして、支持を求めた」といいます。査察を中断し、戦争開始に道開く安保理新決議の案件です。

 当初、ムシャラフ政権はイラク問題で米国寄りでも事態を乗り切るだろうという見方もありました。二〇〇一年の米同時テロでそれまで関係が深かったタリバン勢力と手を切ると表明をし、アフガン戦争を支持したときも、反発した国内の強硬派イスラム教勢力を一応抑えこむのに成功したからです。

 しかし、米国の対イラク戦争が現実味を帯びてくるや国民の間に蓄積していた反米感情が表面化しました。二日にカラチ、九日に首都近くの都市ラワルピンディと大規模デモが行われました。

 「米国に反対票を投じるなら、米国は経済援助を撤回させるかもしれない」。十一日、在パキスタンのフランス、ロシア、ドイツ大使らとの懇談で、パキスタンの多くの報道機関関係者はこう見ていました。

 十一日の緊急閣議では、国民に受け入れられない決議案を支持すべきでない点で一致しました。米国支持では国内の反発で政権が弱まるとの判断でしょう。そしてジャマリ首相は「戦争を支持するのは非常に難しい」とのべ、パキスタンは新決議採択で棄権する方針だと伝えられました。

新規援助を突然発表

 十二日、突然新規援助が発表されました。アフガン国境方面の犯罪対策など向けに三千万ドルです。

 そして十四日、ブッシュ大統領は一部続いていたパキスタンへの経済制裁を解除すると発表しました。制裁はムシャラフ氏が一九九九年のクーデター政権奪取などに対して課したもの。解除は民主化促進などを理由としていますが、タイミングからしてイラク問題で米国支持を求める“アメ”という見方がもっぱらでした。

 結局、パキスタンは米国支持を表明しませんでした。米国が採択をあきらめ、イラクに最後通告をした後、カスリ外相は「戦争は正当化できない」と国会で述べました。

 ラホール在住の元大蔵大臣ハッサン氏に、パキスタンが米国支持表明をしない事情を聞くと、ベトナム戦争当時を上回る世界的反戦行動とともに、百カ国以上が参加する非同盟諸国会議、五十カ国余が参加するイスラム諸国会議機構(OIC)がイラク戦争反対を決めたことも指摘しました。パキスタンは非同盟、OIC両方の加盟国です。

 野党のイスラム教政党・統一活動会議(MMA)は政府批判を強めています。「遺憾」表明だけでアメリカを非難していないというのです。イスラマバード在住の英字週刊誌記者は「国民の多くも政府は米国を非難すべきと考えている」といいます。MMAが呼びかける大規模デモは今後も各地で計画されています。


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