日本共産党

2003年3月31日(月)「しんぶん赤旗」

有事法案 米国の無法戦争に参戦

イラク攻撃に自公が便乗


 小泉・自公政権は、有事法制関連法案を四月中旬にも衆院で可決しようと狙っています。“イラク復興支援のための新法が後ろに控えているから”というのが口実です。しかし、イラク攻撃に便乗し、米国の無法な戦争に自治体や国民を総動員する有事法案を強行することは許されません。

思考停止の対米追随政権

海外での武力行使も

 「(日本は)一切武力行使はいたしません。戦闘行為にも参加しません」。小泉純一郎首相は、米国のイラク戦争への支持表明で、こう強調しました。

 憲法九条の下、歴代の自民党政府でさえ、海外での自衛隊の武力行使は禁じられている、としてきたからです。しかし、その海外での武力行使に道を開くのが、有事法案の狙いです。

 有事法制はもともと、米国が、アジアで起こす戦争に日本を協力させるガイドライン(日米軍事協力の指針)を実効あるものにするために、自治体や国民を強制動員できるようにと、制定を要求してきたものです。

 有事法案は、日本が武力攻撃を受ける「おそれ」や「予測」の事態から発動される仕組みです。政府は、この「おそれ」や「予測」の事態が、アジアでの米国の戦争に日本が協力する「周辺事態」と重なり合うことを認めています。

 しかも、海外に展開した自衛隊が攻撃を受ければ、「わが国」への攻撃とみなして、反撃のために武力行使ができるとしています。

 米国のイラク戦争は、国連憲章に基づく平和のルールを覆す先制攻撃、同憲章がきびしく禁じる主権侵害、内政干渉の侵略戦争です。これが許されれば、世界は無法と恐怖に支配されてしまうと、国際的な批判があがっています。

 ところが、この野蛮なイラク戦争について、小泉首相は「米国はかけがえのない同盟国。支援はわが国の責務であり当然」と言明しているのです。

 こんな思考停止の対米追随政権に有事法制を持たせたら、どんな米国の無法な戦争にも付き従って、自衛隊を参戦させ、自治体や国民は強制動員させられることになりかねません。

国民を強制動員

北朝鮮への先制攻撃も

アジアの平和脅かす

 「常に脅威は存在している。だから有事法制が必要だと昨年から(法案を)審議している。常にそういう、いざというときの備えをしっかりしておかないといけない」。小泉首相は二月、記者団から北朝鮮のミサイル問題にどう対応するか問われ、こう述べました。北朝鮮の「脅威」に対抗するため、有事法制が必要だというのです。

 しかし、北朝鮮との関係は、昨年九月に小泉首相自らが署名した「日朝平壌宣言」で、ミサイルをはじめ核開発、拉致、過去の植民地支配の清算といった諸問題を包括的に交渉で解決することで合意しています。

 北朝鮮の「脅威」をふりまいて有事法制の成立をはかろうというのは、片方の手で握手をしながら、もう片方の手で殴りつけるような態度です。

 しかも、ブッシュ米政権は、大量破壊兵器保有の疑惑だけで、先制攻撃も辞さない戦略を採っています。昨年末に作成した「大量破壊兵器と戦うための国家戦略」の極秘付属文書では、この先制攻撃の対象国に北朝鮮などの名前が挙がっていると報じられています。

 北朝鮮に対し米国が、イラク戦争のような先制攻撃を行い、自衛隊も武力を行使し、自治体や国民も強制動員される――。こんなことになれば、それこそアジアの平和と日本国民の安全にとって危険極まりないことです。

欠陥ぶりあらわに

廃案にするのが当然

 政府・与党は、有事法案について「審議は尽くされた」「(衆院で)七十二時間も審議している」とし、与党単独でも審議を再開し、早期の採決は当然という態度をとっています。

 しかし、昨年の通常国会での審議では、法案の核心をなす「武力攻撃事態」の定義や、どういう事態で発動されるのかなどをめぐり、政府の答弁は二転三転し、法案の欠陥ぶりがあらわになりました。だからこそ、与党も「分かりにくい」として、昨年秋の臨時国会に「修正」案を提出せざるを得なかったのです。

 与党は今国会に「修正」案を再提出する方針ですが、昨年の臨時国会では趣旨説明が行われただけ。「審議が尽くされた」どころか、一度も審議されていないのです。

 しかも、「修正」案は、「予測」事態を残すなど、米国の戦争で自衛隊が武力行使する道を開く危険な本質を変えるものではありません。有事法案は、「早期採決」どころか廃案が当然です。


戦争協力は「責務」

主要な役割自治体に担わす

 有事法案では、国の統制の下、自治体に国民動員の主要な役割が担わされる仕組みになっています。

 有事法案は戦争協力を自治体の「責務」と明記。その下で、都道府県知事は(1)医療、土木建築、輸送業者に対する従事命令(2)物資取り扱い業者に対する物資保管命令・収用(3)住民に対する土地・建物の取り上げ―を行わなければなりません。

 今、政府が「骨子」の作成を進めている「国民保護法制」でも、「国民保護」を口実に、土地・家屋の取り上げや医薬品・食料の収用、医療の提供などを、都道府県や市町村が実施させられる仕組みになっています。

 現在たたかわれている、いっせい地方選では「(有事法制は)国民の覚醒(かくせい)につながる」(石原慎太郎東京都知事)といってはばからない候補者もいます。「戦争反対」「戦争協力拒否」の声をあげる自治体をつくれるかどうかが、今まで以上に問われています。


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