2003年3月31日(月)「しんぶん赤旗」
日本共産党の八田ひろ子議員は二十七日の参院総務委員会で、NHKのイラク戦争報道について質問しました。
八田議員は、作家・池澤夏樹さんがメールコラムに「戦争とは…殺された人々、血まみれバラバラになった子供の死体です」「今の段階で攻撃側の動きばかり伝えるのは、この道義なき戦争に加担すること」と書き、アメリカ軍の動きを報道するのを控えてほしいと求めていることを示して、「テレビは戦争の本当の姿を映し出す努力が大事だ」と、NHKの報道姿勢をただしました。
海老沢勝二・NHK会長は「武力行使に対しては世界でも日本でも意見が分かれている。各国の対応や市民の受け止めなど、多角的に伝えることがわれわれの使命。平和国家を目指す立場から放送している」とNHKの立場をのべました。
視聴者のなかから“攻撃側の報道が多い”という声が多数上がっています。
八田議員は「ことは戦争、人の命にかかわること。憲法九条の精神に立ち、報道が戦争をあおっていると国民に受け取られることがないようにしていただきたい」と、NHKの報道の改善を求めました。
NHKの海老沢会長は、「武力行使に対しては世界でも日本でも意見が分かれている」として、「多角的な視点から取り上げている」と、報道の基本姿勢をのべました。
しかし、NHKのイラク報道については「攻撃するアメリカの側に立った報道姿勢が目に余る」と、多数の視聴者から率直な意見が出ています。
連日の報道を見ると、アメリカ地上軍や空母に同行し、あるいはカタールの米軍メディアセンターから、NHKが伝えるものは「従軍報道」そのもの、アメリカ発表のままのものです。言葉づかいまでが、アメリカ軍は「作戦」で、イラク軍は「企て」、果ては「敵は…」「効率のいい作戦」の言葉まで飛び出す始末です。
欧州や中東のテレビ、日本の民放テレビが、メディアセンターは「大本営発表」になっているとし、アメリカの情報操作から距離を置こうとしているのとは大違いです。
放送のよって立つところは八田議員が指摘したように「憲法九条の精神に立った」ものであるはずです。
はからずもイラク戦争が始まった二十日の前日、NHK衛星第一テレビでアメリカが侵略したベトナム戦争を描くドキュメンタリー「特派員報告」を放送。その中で、反戦につながるものを伝えるのがジャーナリズムの役割と位置づけていました。その姿勢を投げ捨ててしまっていいのでしょうか。
視聴者からイラク報道はひどいという声が殺到して、NHKは対応に苦慮している、といわれています。「大本営発表」に成り下がり、国民を誤った方向へ誘導した先の大戦のときの苦い教訓を、いまこそ放送の真にあるべき原点に立って真剣に見つめ直してほしいものです。(わ)