2003年3月31日(月)「しんぶん赤旗」
【ワシントンで浜谷浩司】イラク戦争の長期化が見込まれる中、「イラク解放」を唱えて軍事侵攻を強行したブッシュ米政権と国防総省の「誤算」や作戦上の「手違い」が指摘されるようになっています。米国防総省が二十七日、十万人規模の増派を決定したのも、イラクは「簡単につぶせる」との見通しが外れ手直しを迫られているからです。
補給路 第一海兵遠征軍と第三歩兵師団は二手に分かれ、「かつてない速度での進攻」(米テレビ)でバグダッドに向けて北上しました。クウェートからの補給路は伸びきり、食糧、水、燃料、弾薬、部品の輸送が困難になり、イラク側の攻撃を受けやすくなっています。
トルコ トルコ議会が米軍地上部隊の通過を認めなかったためにイラク北部からの侵攻ができませんでした。参加するはずだった米第四歩兵師団はテキサス州からイラクに向かいますが、戦闘態勢を整えるには、数週間が必要といいます。米軍はイラク北部に空てい部隊を降下させたものの、第二戦線を開くだけの大規模な地上部隊の配備は早期には見込めません。
気象 戦場は数日にわたって視界をさえぎる砂嵐に襲われ、地上軍は空からの支援が受けられず、微細な砂がヘリや銃器に入り込んでトラブルを起こしました。
過小評価 侵攻軍にとって手ごわいのはバグダッド周辺に展開するイラクの共和国防衛隊と特殊部隊だけ、それ以外の軍の反撃はほとんどないとの予想が覆されました。イラク軍は南部でも執ように反撃しました。
ゲリラ戦術 民間人と区別がつかないイラクの民兵が反撃、自爆攻撃まで起きて米英軍をてこずらせています。米国はジュネーブ条約違反だとイラクを非難しています。
ワシントン・ポスト紙二十八日付は、イラクに展開した米地上軍の司令官ウォレス准将が、予想を超える戦争の長期化を認めたと伝え、物議をかもしました。三十一日発売の米誌ニューヨーカー最新号は、ラムズフェルド国防長官がイラク攻撃には大兵力が必要との作戦担当者の進言を繰り返し無視。イラク攻撃を空爆で「安上がり」に済ませようとし、イラク軍の抗戦の激しさの見通しを誤ったと指摘しました。
国防総省の会見では記者団から「軍の元幹部や現役の幹部からも、作戦計画に欠陥がある、地上軍の数が少なすぎる、補給線が長すぎると批判が出ている」との質問が浴びせられました。ラムズフェルド国防長官は「(作戦計画を)検討した軍幹部はこぞってすばらしい計画だとした」。マイヤーズ統合参謀本部議長も、「見事な計画だ」と弁明。ホワイトハウスのフライシャー報道官も「戦場では計算通りにいかないことはよくある」と批判を必死にかわそうとしています。
しかし米政権の最大の「誤算」は、「解放軍」気取りで踏み込んだものの、イラク国内から歓迎の声が十分に聞こえないことです。米軍は開戦前、投降を呼びかける大量宣伝や心理戦を、長期にわたって実施しました。政権を握るイスラム教スンニ派に対するシーア派の反抗にも期待を寄せました。しかし大規模投降やフセイン政権への反乱はこれまでのところ出ていません。