2003年4月1日(火)「しんぶん赤旗」
大島理森農水相は、辞任の記者会見で、疑惑解明に「誠実に対応してきたつもりだ」とのべました。しかし、大島氏は「誠実に対応する」どころか、野党議員の追及をかわすために法律の専門家である衆院法制局に想定答弁集を作成させるなど、疑惑隠しに懸命になってきたのが実態です。
二〇〇〇年六月の総選挙直前にビル所有者から「選挙運動資金」として六百万円を受け取った問題では、大島氏は、元秘書が献金を「流用」したため、政治献金として処理できなかったと説明しました。
しかし、元秘書が「流用」したという根拠は、“流用したと確信している”という大島氏の「印象」だけです。
大島氏自身も、元秘書が流用の事実を言明したわけではないことを認めています。
元秘書官が公共工事に絡み、業者から六千万円の口利き料を受け取った疑惑でも、「あいさつ程度の紹介はした」と前秘書官の口利きは認めたものの、金銭は受け取っていないと疑惑を否定。その根拠も、前秘書官の説明を「信頼」するというものでした。
何の裏付けもなく「印象」や「信頼」を持ち出す大島氏の説明は疑惑隠しをはかるものです。
自民、公明など与党側の姿勢も、疑惑隠しをはかるものでした。野党側が求めた元秘書らの参考人質疑の開催を拒否し、三月中旬に与野党で開催を合意していた衆院予算委員会での参考人質疑は、いまだ実現していません。参院予算委員会での参考人質疑もめどが立っていません。
大島氏の辞任で疑惑に幕引きすることは許されません。野党側が要求している元秘書らの参考人招致は最低限の責務です。
大島氏は辞任会見で、疑惑の中身に何一つふれず、「内閣、国会運営に迷惑をかけた」ことをあげました。「国会運営」に“配慮”して疑惑の幕引きをはかり、いっせい地方選への影響も最小限にとどめようという思惑が先行したものです。
真相解明に背を向け、有事法制や個人情報保護法案などの与党側が重要課題に掲げる悪法を推進する上で障害となる「大島問題」にフタをするという与党側の姿勢は、許されません。
小泉純一郎首相の任命責任も重大です。大島農水相は、昨年九月末の閣僚就任直後から疑惑が指摘されていました。小泉首相は、「本人が説明する」の一点張りで、疑惑解明にこたえるどころか、六カ月もの間放置。
大島氏にかかわって数々の問題が噴出した中でも、「農水相としての職責を十分果たせることを強く期待している」とかばい続けてきました。辞意表明を受けても、「残念」の一言ですませ、人ごとの態度です。
大島問題にとどまらず、自民党長崎県連の違法献金問題、坂井隆憲衆院議員の裏金問題と相次ぐ「政治とカネ」の問題で、まったく自浄作用を果たさない小泉首相の政治姿勢が厳しく問われます。(小林俊哉記者)
国会で取り上げられた大島理森農水相に関する主な疑惑は次の通りです。
宮内寛前秘書官が、大島氏の選挙区内の青森県八戸市の市立病院建設に絡み、業者から六千万円の口利き料を受け取って、自宅購入資金に充てた疑惑が昨年十月に発覚。大島氏は「見返りにカネをもらったことはないと報告を受けている」と否定しましたが、衆院予算委に提出された宮内氏の預金通帳などを通しても住宅資金の出所は不明のまま。
藤田典久元秘書が、二〇〇〇年六月の総選挙直前に青森県八戸市のビル所有者・今淵和夫氏から「選挙運動資金」として六百万円を受け取りながら、政治資金収支報告書に記載しなかった疑惑。二月二十日の衆院予算委集中審議で発覚。大島氏は、藤田元秘書が資金を流用したため、収支報告書に記載できなかったとして、政治資金規正法違反の疑いを否定。しかし、藤田元秘書が「流用」したという根拠は何も示していません。
大島農水相が、二月二十日の衆院予算委集中審議で野党側の追及を乗り切るため、閣僚でありながら立法府の衆院法制局に想定答弁集を作成させ、それをもとに六百万円献金疑惑の違法性を否定する答弁をしたもの。大島氏は、“議員として問い合わせたもの”“想定答弁ではない”と弁明。衆参両院の議長が問題視していま す。
二〇〇〇年の総選挙前後に公共事業受注企業六社から総額千七百万円の献金を受けていました。うち五社は、それ以前の三年間の献金額はゼロか数十万円単位の少額。公共事業受注企業からの選挙のための献金を禁じた公職選挙法に違反する疑いが濃厚です。筆坂秀世政策委員長が明らかにしました(三月六日、参院予算委)。
公正取引委員会から談合で排除勧告を受けた青森県八戸市の建設業者二十四社から、一昨年までの三年間で三千七百万円の献金を受け取っていたことが判明。大門実紀史議員が「鈴木宗男議員でさえ入札停止の『やまりん』からの献金を返還した」(三月十一日、参院予算委)と追及。今も返還に応じていません。
大島氏が代表の自民党青森県第三選挙区支部と、資金管理団体の大島理森政経会が、まともな政治活動は行わず、企業・団体献金を受け取ってはいけない政治団体に献金の大半を横流ししている実態を、八田ひろ子議員が明らかにしました(三月十四日、参院予算委)。政治団体の支出のほとんどは飲み食いやゴルフなどの接待。