2003年4月4日(金)「しんぶん赤旗」
ブッシュ米政権は、イラク攻撃が国際的支持を受けているとして三十カ国余の「有志連合」リストをあげていますが、支持が多いとされる中東欧諸国では、米英の無差別攻撃が激しくなり、住宅の破壊や民間人の犠牲が急増するなか、反戦世論が高揚、政府首脳にも大きな影響を与えています。(パリで浅田信幸)
戦争反対色が明確になりつつあるのはチェコ。クラウス大統領は三月末、日刊紙ムラダー・フロンタ・ドネス紙上で「イラクは確かに容認しがたい独裁国で欧米文明にとって危険だが、軍事力で民主主義を押し付けられるという考えは、別の宇宙の発想だ」と、米国の「手法」に疑問をはさみました。
また与党の社会民主党は三月三十日に開いた党大会で「国連の承認なく開始され、国際法に違反した米英および同盟国が進めている対イラク戦争に不同意」を表明しました。
一方、安保理非常任理事国で終始一貫して米英の決議案に支持を明確にしたブルガリア、国際問題での対米追随が際立つルーマニアあるいはハンガリーの三国もそれぞれ、米国によるイラク大使館閉鎖の要請に応じないことを三月末までに決定しました。
ブルガリアのパルバノフ大統領は、政府の対米支持方針に反対して「私は、国連の決議なく開始されたこの戦争を承認しない」と言明。ルーマニアのイリエスク大統領も「条件にかかわりなく米国に従う」つもりはないと発言しています。ハンガリーのコバーチ外相は、大使館閉鎖の要請拒否を明らかにした三月二十七日の記者会見で「ハンガリーはイラクと戦争しているわけではない」と述べました。
これらの国は、いずれも米国主導の対イラク戦争で直接の戦闘には加わらないものの何らかの軍事的協力を実行しているとされます。しかし国家・政府首脳クラスのこうした発言の背景には、戦争の進行とともに強まる反戦・政府批判の世論があります。
チェコでは70%、ブルガリアでは71%、ルーマニア86%、ハンガリーでは82%と、どの国でも世論の圧倒的多数はイラク戦争に反対を表明しています。
米国は一日、対イラク戦争「有志連合」にあらたにウクライナが加わったと述べています。二日付英紙フィナンシャル・タイムズは「米国が、軍事行動への広範な国際的支持を描き出すことを、どれほど熱望しているかを示すもの」と皮肉りました。
中東欧諸国の実情は、「有志連合」の内容の薄さを物語っています。
【モスクワで北條伸矢】ウクライナ外務省のルブキフスキー情報局長は一日、同国駐在のパスクアル米国大使が「ウクライナ政府から(反イラク)連合の一員と認めてほしいという申し入れがあった」と発言(三月二十八日)した問題について、「申し入れていない」と否定しました。
ウクライナでは、イラク攻撃賛成が3%にすぎません。
同局長は「大量破壊兵器の使用に備えるという点に限っては同盟国の一員だが、“反イラク連合”の一員ではない」と弁明。米国の要請にこたえて先月末から湾岸地域に派遣している核・化学兵器対応部隊に関し、「配備先はクウェートに限定されており、軍事行動には参加しない」と強調しました。
これまでのところ、ウクライナ政府関係者はイラク攻撃に対する賛否を明言していません。
ウクライナは昨年五月、北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を決定しました。
しかし米国は同年九月、イラクへの防空レーダー輸出疑惑を理由に五千四百万ドル(約六十五億円)のウクライナ支援計画を中止しています。このため、米国の支援再開を求めるウクライナは、米国に反対できない事情があります。
米国務省は三月二十六日、イラク攻撃を支持するリストにウクライナを追加。このあと、パスクアル米大使が「米国はイラク復興事業へのウクライナの参加を認める」などと述べ、「イラク攻撃支持」と引き換えにウクライナ支援を再開する考えを示唆しました。
ところが、最新の調査(三月二十─二十四日に実施)ではウクライナ国民の「イラク攻撃支持」はわずか3%と、世界でも最低水準です。今回の局長発言は、米国の圧力と世論との板挟みにあるウクライナ政府の苦しい立場を示しています。