日本共産党

2003年4月4日(金)「しんぶん赤旗」

韓国国会のイラク派兵可決

市民団体から批判相次ぐ


 韓国国会が二日、同意案を可決したイラク戦争派兵の理由として、盧武鉉大統領は、朝鮮半島の平和と韓国経済の安定をあげ、「苦渋の選択」を強調していますが、市民団体などの批判は続いています。

 盧大統領は、同意案採決に先立つ二日の国会演説で、「多くの議員と国民が派兵に反対している」とし、「その最大の理由は、この戦争に大義名分がないということだ」「わが国が派兵すれば、米国が北朝鮮を攻撃しようとするときに反対できなくなる」という主張があることを認めました。しかし、「大義名分にこだわり米韓関係をぎくしゃくさせるより、長年の友好関係と同盟の道理を尊重」すると述べ、派兵への同意を国会に求めました。

 その理由の一つは、「北朝鮮の核問題を平和的に解決するためには、なによりも堅固な韓米協調が重要だ」というものです。「戦争は絶対に防がなければならない」と強調し、「核問題の解決の過程でも大義名分が問題になるかもしれない。米国や国際社会も大義名分だけにしたがって態度を決めるとは限らない」と述べ、米国が軍事的手段に訴えようとする可能性を示唆し、米韓協調を維持することで軍事的手段を抑える、との見解を表明しました。

 もう一つの理由は、朝鮮半島の戦争の可能性と米韓関係のあつれきが韓国に対する外国資本投資を委縮させている、というものです。

 各種世論調査では八割の国民がイラク戦争に反対しています。派兵決定に対する抗議行動は三日も続きました。有力市民団体の参与連帯は、来年の総選挙に向け、派兵に賛成した議員に対する落選運動を展開する意向を表明。労組、環境保護団体、女性団体など、分野を問わず各団体が派兵反対の声明を発表しました。

 政府系とされる京郷新聞の三日付社説も、「大義名分を投げ捨てた決定」だと批判し、「イラク戦争に軍隊を送るごく少数の国になり、わが国の外交にとって大きな負担になる」と今後の悪影響を懸念しています。


解説 「現実論」に大きな危険

 イラク戦争への派兵反対論と賛成論の対立は、韓国で「大義名分論と現実論」の論争と言われてきました。派兵を決定した盧武鉉大統領の「現実論」は、大きな危険を伴うものです。

 派兵に強く反対した議員、民間団体の活動家らは、盧大統領の積極的な支持勢力です。世論に影響力のある人々の失望は、盧大統領の支持基盤の弱化を招きかねません。

 派兵には深刻な疑問がつきつけられています。

 反対論者は「イラク攻撃を支持したら、北朝鮮への軍事攻撃に反対できない」と主張します。大統領は、イラク戦争を支持することで、米国から核問題の平和的解決への協力をとりつける、との構想を示しましたが、先制攻撃を正当化するブッシュ米政権が絶対に軍事的手段に訴えないとは言い切れません。

 「イラク国民を犠牲にして自国の平和だけを追求するのか」という批判もあります。大統領就任演説で打ち出した「平和繁栄政策」は、朝鮮半島だけでなく北東アジア全体の平和を希求する壮大な構想として、多くの人々に感銘を与えました。平和のために戦争を支持する、という態度は、「平和繁栄政策」に対する国内外の支持に影響しかねません。

 イラク戦争への協力は、みずからの「対米従属」批判との整合性も問われます。二日の国会演説で大統領は、イラク戦争に反対することは「対等な韓米関係のために国民の生存を危険にさらす」と主張、「今後、対等な韓米関係のために引き続き努力する」としましたが、真意がどこにあるのかが問われます。

 さらに、憲法第五条は「大韓民国は国際平和の維持に努力し侵略的戦争を否認する」と宣言しています。国連決議すらない戦争への協力に対し、韓国内では憲法違反だとの批判が出ています。(面川誠記者)


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