2003年4月7日(月)「しんぶん赤旗」
六日放送のNHK「日曜討論」で、日本共産党の筆坂秀世政策委員長は、イラク戦争や「戦後復興」への日本の対応、有事関連法案などについて、各党の政策責任者と討論しました。
イラク戦争の現状をどう見るかについて、筆坂氏は、「武力行使が認められているのは、自衛権の行使と安保理の決定(があった場合)の二つだけだ。今度のアメリカの攻撃にはそのどちらもなく、国連憲章違反の先制攻撃だ」と指摘。無差別爆撃の様相を呈し、劣化ウラン弾、クラスター爆弾などの残虐兵器が使われていることについて「大量破壊兵器(廃棄)の名を借りて、自分が持っている大量破壊兵器の実験場にしている」と批判し、「こんな戦争を支持した小泉内閣の責任は、国際的にも今後も厳しく問われる」と述べました。
自民党の久間章生政調会長代理は「9・11テロ攻撃を受けたアメリカにとって、大量破壊兵器への恐怖感は私たちが考える以上に強かったんじゃないか。そこをイラクは読み違えた」とアメリカを擁護。筆坂氏は「そんな論理を認めれば世界は無法になってしまう」と批判しました。
続いて「戦後復興」のあり方が議論になりました。筆坂氏は「戦争の即時中止を言わずに復興支援を議論するのは無神経だ」と述べ、ライス米大統領補佐官の“解放のために血を流したのはアメリカだ。アメリカと同盟国が復興支援を担うのは当然であり、国連の関与は限定的にしか認めない”との発言を、「無法な戦争を解放戦争と美化し、復興支援は自分たちがやって石油利権は他には渡さないぞ、という勝手気ままな議論だ」と厳しく批判しました。
戦後復興への財政支出や自衛隊派遣について筆坂氏は、「今度の戦争支持で、アラブでの日本への信頼は決定的に失墜したと思う。そこへの自衛隊の派遣は、日本の国益を考えてもやるべきではない」と強調。「川口外相は戦後復興では『国際協調』を重視すると言うが、今回の戦争を支持するときにも、対米追随を『国際協調』の言葉でごまかした。国連の枠組みの外での復興支援に、また『国際協調』と言ってついていけば、口では国連中心を言い、実際には崩してしまうことになる。それは絶対にやるべきではない」と主張しました。
有事関連法案に話題が移り、法案成立を急ぐのはイラクや北朝鮮情勢を考えてのことかと問われた久間氏は、「そうではない。法律をあげないことには、二年以内に定めるとした国民保護法制に着手していいというお墨付きが得られないからだ」と述べました。
筆坂氏は、「今度のイラク戦争は、今作ろうとしている有事法案の危険性を浮き彫りにしている。日本の同盟相手のアメリカは、先制攻撃を国家戦略として採用しており、アジアでも先に戦争をしかける可能性がある。法案に『予測』や『おそれ』が入っているのは、その段階でも強制的に陣地構築などをやれるようにするためだ」と指摘。イラク戦争や北朝鮮の動きに関連して「日本もトマホークを持て」「敵の基地を攻撃できる能力を持て」などの議論すら政府・与党内から出ているのは「今の状況への悪乗りだ」と批判しました。
公明党の北側一雄政調会長は、「民主党や自由党の意見も取り入れ、ぜひ成案を得て今国会で成立させたい」と、有事法制成立に意欲を示しました。
最後に、イラク戦争が世界、日本経済に与える影響と、そのもとでの経済運営がテーマになりました。筆坂氏は「十二、一、二月とまた所得が落ち込み、そのために価格が低下している。原油の値上がりで原材料費は高騰するが価格は上げられない。これが経済を圧迫している」と発言し、「このように所得が落ち込んでいるときに、負担増はやるべきでない。野党四党が共同提案した健保を二割負担に戻す法案を与党は真剣に吟味し、増税や負担増はこの際中止すべきだ」と述べました。