2003年4月9日(水)「しんぶん赤旗」
政府の個人情報保護法案と野党四党の対案の趣旨説明・質疑が八日の衆院本会議でありました。政府案は前国会で表現の自由、報道の自由を侵害すると批判を受け廃案となり手直し再提出したもの。日本共産党の春名直章議員が、政府案の問題点、野党案の特徴について質問しました。
春名氏は政府案について報道目的や著述目的の判断が主務大臣に委ねられることで「恣意(しい)的な判断がなされる危険な構造はそのまま」「報道に介入する余地が生まれる」と批判しました。
また思想・信条、病歴などのセンシティブ情報の収集にかんする規定が欠落していると指摘。保護条例を策定している地方自治体の六割が設けているのに、なぜ国が設けないのかをただしました。
行政機関にかかわる個人情報保護法案について、職権を乱用して個人情報を収集しリストを作成しても、政府案では「職務の用」と判断されれば罰則が適用されないと指摘。防衛庁リスト事件でリスト作成の自衛官のケースでは罰することができないのではないかと指摘しました。
小泉首相は、主務大臣制について、「恣意的判断を許容するものとはなっていない」と強弁。センシティブ情報については、「あらかじめ類型化して定義することは困難」と導入を拒否し、防衛庁リスト事件と同様の不正事件について罰則が適用されないこともありうることを認めました。
日本共産党の吉井英勝議員が野党案への答弁に立ち、個人情報を取り扱う監督機関である第三者機関を設置する意義、「自己情報コントロール権」の保護を真正面にかかげた特徴、防衛庁リスト事件のような組織ぐるみの職権乱用を許さない野党案の罰則規定について説明。「報道の自由やプライバシーに公権力を介入させないのが原則。行政から独立した公正中立の第三者機関が必要である」と強調しました。
個人情報保護法案に関する野党案の趣旨説明・質疑が八日の衆院本会議でおこなわれ、日本共産党、民主党、自由党、社民党の四野党提出者が、それぞれ答弁にたちました。
野党案は、個人情報を扱う業者の監督を政府案にある主務大臣ではなく第三者機関である個人情報保護委員会として独立させるとしています。また、個人情報の取得や利用などにあたって本人が関与する「自己情報コントロール権」を明記しているのが特徴です。
思想・信条や病歴などのセンシティブ情報については、行政機関、業者が収集、取り扱うことを原則的に禁止しています。
法案提出者の日本共産党の吉井英勝議員は、職権乱用で個人の秘密にあたるリストを作成すれば、目的を問わず罰則を適用するという政府案にない野党案の考え方について説明。「業務に役立てば個人の秘密にかかわるリストでも問題ないという状況が広がったのが防衛庁リスト事件であり、これを繰り返さない罰則規定が必要だ」と述べました。
また、センシティブ情報の収集禁止を明記した野党案について、「個人の権利を守るために原則禁止とした」と答弁。一方、政府案には、この規定がなく、「本人が自分の情報を開示請求した場合にも、“相当な理由”があれば、目的外に個人情報を利用したり、開示請求を拒否してもよいという幅広い例外規定を設けている」と批判しました。