日本共産党

2003年4月9日(水)「しんぶん赤旗」

ブッシュ無法戦争(15)

施しはいらぬ 尊厳を

イラク国民は?


 【カイロで小泉大介】ブッシュ米大統領は五日の米国民向けラジオ演説で、イラクに侵攻した米英軍について「解放軍として歓迎されている」「罪のない民間人を思いやっており、投降兵士にも配慮している」「食料、水、医薬品の配給も開始した」と力説しました。

 バスラを含む南部やカルバラなどイスラム教シーア派市民が多い地域では、侵入してきた米英軍を歓迎したり、一部住民がフセイン・イラク大統領の巨大な銅像を引き倒すといった様子が伝えられています。しかし他方では、アラブのメディアによって米英軍の侵攻を非難する住民の声が数多く伝えられています。

 カタールの衛星テレビ・アルジャジーラは、五日に南部のナシリヤを取材したアムル・カヒキ記者のリポートを放映しました。

 カヒキ記者にたいし、弁護士のモハメド・バッダルさんは「ナシリヤの現状は悲劇だ。安全も生活も危機的で、水、電気は十二日間止まっている。昨日、米軍のロケット弾が住宅地に落ち、家屋が破壊され、多くの子どもや女性が死んだ。これから先の運命は誰にもわからない」と述べました。

 ナシリヤの住民は語ります。

 「食料の配給なんてまったくない」「フセインもうそつきだがブッシュも同じだ」「米軍の兵士は七歳の子どもを銃撃し、そばにかけよった母親にも銃を向けた」「米軍は検問所で女性の服を脱がせ体に触った」「施し物はいらない。われわれが欲するのはイラクの尊厳だ、米英軍をこの国土から追い出すことだ」

 ここでは、水道の浄化装置を復旧するためやってきた米英軍が、住民から金を巻き上げているとも伝えられています。

 カヒキ記者は「米英軍の攻撃を語る住民の怒りは、火山の噴火を見るようだ」と伝えています。

 スンニ派が国を支配してきたフセイン体制の下で弾圧されてきた南部地域での住民の声だけに、報道には重みがあります。

 住民の反発はナシリヤだけでなく、南部で共通しています。

 エジプトの政府系有力紙アルアハラム六日付は「米英軍の態度に怒り募らせる人々」と題するイラク南部の現状をリポートしています。ウムカスル、ズベイル、サフワンなどの町でイラク軍への協力者を探し出す大規模な家宅捜査が行われ、多くの民家が破壊され、協力者として逮捕された後は家族であっても行方がわからなくなっているなどの実態が報道されています。

 リポートは、「南部では深い怒りがイラクの人々の心を支配している。彼らは米英軍を無礼な侵略者とみなしている」と述べています。米英の宣伝とは逆に、米英軍が住民からパンやミルク、ナツメヤシなどの食料をもらっているとの報道もあります。

 これらの映像や現地リポートは、米英政権が流しているどこでも「住民に大歓迎されている」かのような宣伝や主張が、事実を大きくゆがめていることを示しています。


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