2003年4月9日(水)「しんぶん赤旗」
ロイター通信などによると、米英軍が中心部に侵攻したイラクの首都バグダッドでは七日、両軍兵士の多数の死傷者に加え、爆撃を受けたり、戦闘に巻き込まれる市民が急増。病院は血だらけの負傷者であふれかえっています。
「ここ二日間、医者は休みなくぶっ通しで働き、疲れ果てている。状況はひどいものだ」
「病院のすぐ近くで爆発音が聞こえ、窓はその衝撃でガタガタ震えている。死傷者を担ぎこむ無数の救急車や民間乗用車も目にした」
ロイター通信は七日、首都中心部にあるキンディ病院を訪れた赤十字国際委員会(ICRC)の報道官の証言を伝えました。この日、米英軍は上空からの爆撃に加えて、地上から戦車などで首都に猛攻撃を開始。市街での戦闘のためICRCのチームが行けたのは同病院ただ一つでした。
キンディ病院の医師の話では、この二十四時間以内に四人の遺体、百七十六人の負傷者が運び込まれました。負傷者があまりにも多く、麻酔薬や医療機器も底をついているといいます。
北部にあるディミヤ病院も状況は同様で、六日から死者十八人、負傷者百四十一人が担ぎ込まれました。ほとんどの人は爆撃から逃れようとして負傷したと語ります。
多くの病院でベッドが不足し、ソファや床など使えるスペースをすべて使って治療にあたっています。ICRC本部(ジュネーブ)のドゥマニ報道官は、「いくつかの病院はもはや戦争負傷者を受け入れる能力がない。極限状態にまで達している」と述べました。爆撃で住居を破壊され家族を失った市民からは「無法な攻撃は許せない。すぐやめろ」と怒りの声が上がっています。
さらにここ数日、バグダッドの各地域では停電が水道施設に影響。市内では水がまったく得られない地域もあり、清潔な水の不足で下痢や呼吸器疾患の発生が懸念されています。ICRCは、水の供給が最優先課題としていますが、米英軍による攻撃の激化で援助活動も中断を余儀なくされる例が相次いでいます。
アンマンにいるICRC幹部は六日、バグダッド南部にある病院に医療物資を届ける予定だったトラック便が、米軍の軍事行動が原因で取り消されたと報告しました。国連関係者によると、南部のヒラ病院への緊急医療物資を運ぶ便がキャンセル。同病院では、女性や子どもを中心に一日に約三百人が押し寄せる事態になっています。
ヨルダンの首都アンマンにいるICRC幹部はイラク南部の重要な橋が破壊され、迂回(うかい)道路も軍事行動で危険なため利用できないと指摘。「連絡道路はもはや開放されていない。ICRCは到達できない」と怒りを語りました。
この状況はカルバラ、ナジャフ、ナシリヤなどイラク南部一帯に共通しています。国連関係者によると、ナシリヤでは米軍の空爆により医療品の貯蔵倉庫が破壊されたといいます。