2003年4月10日(木)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 今年中に終了することが話題となっている、新生銀行の瑕疵(かし)担保特約とはどういうものですか。(富山・一読者)
〈答え〉 新生銀行の瑕疵担保特約は、旧・日本長期信用銀行(長銀)から引き継いだ貸出債権のうち、今年二月までに劣化した債権を、国に元の価値で買い取らせる契約です。差額は税金で穴埋めします。
一九九八年に経営破たんした旧長銀は、国有化で税金を注入されてから、二〇〇〇年三月、米リップルウッド社らの投資組合、パートナーズ社に十億円で譲渡されました。特約はこのとき預金保険機構、長銀、パ社が結んだ「最終契約書」(株式売買契約書)で定めたものです。
パ社に譲渡された長銀(のちの新生銀行)は、九九年に金融再生委員会が「引き続き保有することが適当」と判定した貸出資産を、旧長銀から引き継ぎます。しかし、譲渡から三年以内に(1)「正常先」債権の返済が遅延するなど、当初の判定根拠に「瑕疵」が生じ(2)その資産が二割以上減価した―場合、新しい長銀は、その債権を当初価値で預金保険機構に買い戻させることができると定めています。
今年一月末時点で、新生銀行が預金保険機構に買い取らせた債権額(簿価)は、九千二百八十二億円にのぼります。譲渡のさいに持参金として渡した巨額の引当金相当分をのぞく、六千二百五十億円を預保機構が支払いましたが、千二百億円以上が税金で穴埋めされるみこみです。新生銀行は、引当金とあわせた一兆円近い額によって、債権がまるまる回収できます。
特約は債務者や他の取引行を脅して要求をのませる“武器”にもなり、新生銀行は七兆七千億円の貸出金を三年で半減させる猛烈な貸しはがしから、利益さえ計上しました。この貸しはがし熱は大手銀行にも伝染し、優良企業までが資金回収されています。巨額の税金投入で金融機能の大規模縮小とモラルハザードを招く、金融政策の破たんの最悪の見本です。(博)〔2003・4・10(木)〕