日本共産党

2003年4月11日(金)「しんぶん赤旗」

蛮行の罪、免れないイラク戦争

無法に無法重ねる米英

軍事占領続ける構え


 米英軍は九日、イラクの首都バグダッドを軍事制圧し、フセイン政権は事実上、崩壊へ向かっています。米英両国はイラクの「解放」と称していますが、国連憲章を踏みにじった侵略戦争による「解放」などありえません。残虐兵器を平然と使い、国際人道法を侵害して多くの民間人の犠牲を出している米英両国の蛮行の罪は免れません。

 フセイン大統領の消息は不明です。イラクのアルドゥーリ国連大使は九日、「本国との連絡がつかない」と述べました。米軍は全土の軍事制圧を目指す構えです。軍事行動の継続は民間人の犠牲者をさらに増大させかねません。

 米英両国は世界の反戦の声と国連憲章に基づく平和のルールを無視して戦争を開始しました。

 国連安保理は今回の戦争の「根拠」となるいかなる決議も行っていません。国連憲章は先制攻撃を禁じています。米英が主張してきた「イラクの政治体制の転覆」は国連憲章が定める内政不干渉の原則をまっこうから踏みにじるものです。

 イラクの大量破壊兵器の保有疑惑の問題は査察継続によって平和的に解決できるというのが国連安保理の多数の認識でした。にもかかわらず、米英は査察を強引に断ち切って、一方的に武力行使を開始したのでした。

 さらにこの戦争で米英軍は民間人の死者千数百人を出す残虐行為を繰り広げてきました。残虐兵器の使用だけでなく、病院や住宅、民家、農家などに対する無差別爆撃を繰り返してきました。

 「膨大な数の民間人の犠牲者・被害者がいるのは確かだ」「緊急手術用の医薬品・資材が限界に達しつつある」。世界保健機関(WHO)の報道官は八日のバグダッドの病院の惨状についてこうのべて、告発しています。

 米軍は、民間人に対する無差別攻撃の事実を報道してきた報道機関も攻撃しました。

 米国はイラクの軍事占領を続け、国連の役割を人道援助などに限定する構えです。戦後の世界の平和の秩序を破壊した侵略戦争という国際法違反の無法行為に無法を重ねる行為です。

 アラブ連盟は三月二十四日の外相会議で「イラクに対する米英の侵略を非難」し、「侵略軍の即時、無条件撤退を要求」しています。

 米国はかつて、イラクの「自由」を抑圧してきたフセイン政権を支えてきました。

 フセイン政権は一九八〇年にイランに対する侵略戦争を開始し、八八年まで続いたこの戦争と、九〇年八月のクウェート侵略に始まる湾岸危機・湾岸戦争でイラク国民を戦争の苦しみに投げ込みました。この間、国民抑圧の強権政治を続けてきました。

 米国はイランへの戦争を支持し、フセイン政権に巨額の軍事支援を行い、化学兵器の材料を提供し、この兵器をイラクの少数派クルド人やイラン軍に使用した同政権の国際法違反の非人道的行為を長年不問に付してきました。

 ブッシュ政権はさらにシリアやイランの「脅威」を口にしています。今回のイラク戦争で示された米国の覇権主義は中東と世界への現実の脅威になっています。

 バグダッドへの米英軍の進出をイラク市民が「歓迎」するという報道もあります。しかし、実際には民間人の犠牲を出している戦争への怒りを表す人たちは多く、今後、怒りが深く、強く広がっていくでしょう。

 国連憲章は紛争問題の平和的解決、加盟国の主権平等の原則などをうたい、他国への侵略と主権国家の支配を禁じています。侵略戦争の中止と、この平和のルールを取り戻すことが今、強く求められています。(伴 安弘記者)


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp