2003年4月11日(金)「しんぶん赤旗」
健康保険患者負担の一・五倍化(三割負担)や高齢者負担増を強行した小泉首相に、全国十二道県二政令市の医師会代議員会が「退陣要求決議」をあげるなど怒りが広がっています。道県段階で最初に決議した北海道医師会(会員八千百七十五人)の赤倉昌巳副会長にその怒りを聞きました。
北海道医師会の代議員会(定数百十二人、三月九日)であげた「小泉内閣の退陣要求」決議は、われわれ医師の常々の思いなんですよ。
当初は、三割負担凍結などの要望を掲げた決議案を考えていました。その直後、名古屋市医師会が「退陣要求決議」をあげたと知り、「われわれもやろう」となったんです。役員間でも「やろう。入れるなら要求の一番最初に掲げよう」と。
健保本人の三割負担や医療への株式会社参入などは、多くの人が反対し、自民党のなかでさえ反対が根強い。ところが小泉首相のところに行くと、それがすべてひっくり返されてしまう。三割負担強行も小泉首相の決断で決めてしまった。
これまで医師会は与党の自民党と話をすすめてきましたが、これじゃ小泉内閣にやめてもらうしかないと、みな常々思っていたんです。皆保険制度を守ろうというわれわれの立場も、負担を軽くしてほしい国民の願いも、何一つ認めない。これじゃ小泉首相退陣でしか打破できない─みなそう思っていますよ。
とくに三割負担は、重症患者や手遅れの人がいかに増えるか、はっきりしています。早期発見、早期治療が医療の命なのに、それを手控えるようにするわけですから。
決議でも言ったように、三割自己負担は、患者の受診抑制、病院の経営悪化を生じ、地域医療を崩壊させ、「医療の質の低下」や「医療事故の多発」につながります。
しかも小泉内閣がすすめる「自由診療」や「混合診療」は、保険医療の範囲を狭め、お金のある人は、いい医療が受けられる、ない人は受けられないという、保険医療の質の低下に直結する問題です。医療の格差が生じ、粗診・粗療や医療事故につながる。これは絶対認められません。
小泉さんは、医師会が反対しているのは「自分たちの収入が減るからだ」と思っているようですが、一番困るのは患者です。いまはそれを医師会が代弁しているんです。
これまでは、一度法案が成立してしまうと、反対の声はやんでしまう。ところが今回は、いままでと違う。われわれはもちろん、国民も野党もあきらめていませんよ。公明党も自分たちのことだけを考えないで、庶民の立場に立ってほしい。野党がもっと数を増やして、国民とともに力を発揮してほしいですね。
あかくら・まさみさん 一九三五年札幌市生まれ。北大卒。七〇年札幌市で、七七年からは同市北区で内科クリニックを開業。九七年から北海道医師会常任理事、二〇〇一年から現職。