日本共産党

2003年4月12日(土)「しんぶん赤旗」

ブッシュ無法戦争〈17〉

無秩序と混乱

「これは解放ではなく占領だ」と市民から声

何でも撃つ米海兵隊員


 米軍が首都バグダッドのフセイン大統領宮殿に突入してから四日目。市中心部のフセイン大統領の銅像が米海兵隊と一部市民の手で倒され、市民が米兵に手をふり、花束を送る、そんな光景が連日米CNNテレビなどから流れます。

 他方で、目をおおうのが略奪の光景です。公共機関に入りこんで品物を奪う少年たち、それを傍観する米海兵隊員。それだけではありません。自爆攻撃におびえたのか、やたら市民に銃を向ける米兵。九日には、負傷者を運ぶ救急車に兵士が発砲するという事件も起きました。

 無政府、無秩序と混乱。これが、米軍による「解放」なるものの正体ではないのか−−。歓迎と不安の交錯のもとで、市民の怒りは急速に高まっています。

 八日に米軍の攻撃で同僚記者を殺されたカタールの衛星テレビアルジャジーラは十日、ディヤル・オマリ記者の取材で市内の様子と市民の思いを報告しました。

 「米軍は占領軍だ」「われわれの街は占領された」と多くの市民が語っている−。同記者はこう強調します。

 「バグダッド市民の間には驚きと混乱の感情が入り混じっている」「フセイン支配から逃れた喜びと、市内に広がる略奪への悲しみ、米軍の攻撃によって家族や親せきが死亡したり負傷したりしたことへの怒り、そして占領後は米軍によって張り巡らされた検問への怒りが市民の間に複雑に交差している」

米軍士官は略奪止めず

 つづいて、九日の米軍占領以来の多くの略奪行為を目撃した弁護士のモハメド・シェイカリ氏にインタビュー。モハメド氏はいいます。

 「私が昨日見たのは、これまで世界のどこでも見たことのない光景であった。米国はバグダッドのすべてをめちゃくちゃにした」「私はバグダッドの郊外からたくさんの若者がやってきて、民家、大学、政府施設、商店などあらゆる場所で略奪をおこなうのを目撃した」「私はモスクの前に立って、彼らに、その行為は神の教えに背くものであり、他のイラク人の権利を侵害するものだと力の限り叫んだのです」

 シェイカリ氏はさらに語気を強めました。

 「私は米軍士官に略奪を止めるよう訴えたが、彼らは何もせずにこういった。『イラク人は狂っている』と。米軍は何もしないだけでなく、略奪する若者たちに道をゆずり、銀行のドアを開け、若者を招き入れることさえしていた。米軍はどの政府施設への略奪も阻止しなかったが、石油省だけは別だった。米軍が包囲していた。国連事務所でさえ守らないのに」

 「この国にはともかくも法があった。しかしいまは法もなければ秩序もなにもない」「彼らがわれわれに自由をもたらすかって?」「そんなことはありえない」「われわれは自由がイラクの国民自身の手でもたらされることを望む。侵略者の手によってではなく」

 同氏は続けます。

 「この国はいま、侵略者のたなごころにのる奴隷の国になろうとしている。私はとても悲しい」「米軍の支配によってカメラの目がとどかなくなったところには、いくつものイラク市民の屍(しかばね)が横たわっている」

通りの車も歩行者さえも

 英紙フィナンシャル・タイムズ十一日付は、海兵隊の無法ぶりをリアルに伝えています。

 同紙のポール・イーデル記者は「バグダッドの街頭に配備された米海兵隊は十日、民間人の服装をしたイラク戦士からの攻撃にあまりにおびえてしまい、非武装の男性、女性、子どもに対し再三発砲した」「三時間に三度、私は、サダム・フセインの小さな宮殿を占拠した部隊が発砲し、五人を殺害し、五人を負傷させたのを見た。その中には、頭を撃たれた六歳の少女もいた」と書いています。

 同記者は「どこから発射しているのか探そうとしても、見渡す限り民間人しかいない」という海兵隊の兵長の言葉を引用しながら、「海兵隊は、わずかでも脅威だとみなせば、すべてに発砲した」と述べ、次のように伝えています。

 「路地から叫び声が聞こえた。チャンネル4のイラク人通訳、モハメド・ファトナン氏は、宮殿の外の道路を横切り、少女を抱いて戻ってきた。少女ザハラ・アブデルサミーは、頭から出血していた」

 「路地では、銃声を聞いて自宅のバルコニーに飛び出してきた男性が射殺された」

 「三菱の白いバンが、宮殿の壁沿いの大通りを猛然と走り、運転手はハンドルに突っ伏していた。意識を失ったか、すでに死んでいたのだろう。バンは向きを変えて壁に衝突した。死んだ運転手は、止まれと命ずる警告射撃の意味が分からなかったのだ」

 「われわれの運転手は、宮殿の見張り台にいた海兵隊員が、彼のいる場所からわずか二十メートルしか離れていない歩道を歩く三人の男性を射殺した様子を話してくれた」

 (カイロで小泉大介)


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