2003年4月13日(日)「しんぶん赤旗」
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昨年十月から高齢者への一割負担、四月から健康保険本人の三割負担と、重くのしかかる医療費負担増。これによって受診抑制がすすみ、患者の重症化が懸念されます。なかでも、酸素の吸入を続けなければ日常生活もままならない全国十一万人の在宅酸素療法患者の救済は、緊急に求められています。
「在宅酸素の患者救済へ、障害三級までの医療費無料化を」。十三日投票の岡山県議選で四選をめざす日本共産党の武田英夫県議の訴えに、岡山市在住の滝川毅さん(68)は期待を寄せています。
滝川さんは岡山低肺友の会会長で、自身、呼吸器障害のため在宅酸素療法を続けています。現在は障害二級までに限られている同県の医療費助成制度が、在宅酸素の患者に多い三級まで拡充されることを願っています。
「在宅酸素の患者は、重症でも障害三級の場合が多い。一級は極めて少ないうえに、呼吸器疾患など身体内部の障害には二級という認定がないため、多くの人が三級なのです。医療費助成の対象が三級まで広がれば救われる人はかなりいる」と滝川さん。
たとえば、障害三級まで助成している新潟県では、県内の在宅酸素患者千八百六十人の約六割、千百十人が三級です。
月八百五十円だった患者負担が一万円超にも―。お年寄りの医療費が、それまでの定額負担から定率一割負担(一部は二割)になった昨年十月以降、とくに在宅酸素療法の自己負担は極端に跳ね上がりました。そのため経済的負担に耐えかねて酸素吸入を打ち切る人が急増。なかには命を失う事態もおきています。
東京民医連の緊急聞き取り調査では、十月から負担が増えた五十八人のうち九割が六千円以上、六割が九千円以上もの増額に。「吸入時間を減らした」「携帯用の酸素はやめた」など、酸素を「中止」「減らした」という人は十一人。ほかにも「やめたいが呼吸が苦しくてやめられない」「酸素は減らせないので食事を減らした」など深刻な事態がおきていました。
岡山低肺友の会の調査では、県内の約二千人の患者のうち約百五十人が、経済的理由で治療をやめていたことが分かりました。
医師からも「在宅酸素療法の患者の支払いは約十倍にもなっている。このような急激な変化にたいする何らかの救済策が必要」との声があがっています。(全国保険医団体連合会のアンケートから)
すでに二十都道県では、障害三級を含む障害者への医療費助成をおこなっています。(別項)
ところが政府は、こうした独自の救済策をつくっている自治体にたいし、国民健康保険の国庫負担金を減額するという“制裁”措置をとっています。
日本共産党の小池晃議員は一日の参院厚生労働委員会の質問で「国は自治体のとりくみを妨害している」と追及。厚労省の真野章保険局長は、“制裁”の対象は千九百九十自治体、削減額は二百七億円(二〇〇〇年)にのぼることを明らかにしました。
「国はこうした“制裁”措置をただちにやめるべき」(小池議員)です。同時に、二十都道県以外の二十七府県は、自治体として住民の命と健康を守る立場で、緊急に現行制度を障害三級を含むものにする必要があります。二十都道県でも、所得制限をなくすなどさらに制度を充実させ、在宅酸素患者の切実な願いにこたえることが求められています。(江刺尚子記者)
跳ね上がった在宅酸素療法の窓口負担 | ||||
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昨年9月→ | 10月 | 増加額 | ||
家族と同居のAさん(74) | 850円→ | 9000円 | +8150円 | 「治療を中止」 |
妻と2人暮らしのBさん(79) | 800円→ | 15000円 | +14200円 | 「食費を節約」 |
一人暮らしのCさん(77) | 1700円→ | 15980円 | +14280円 | 「近い将来払えなくなる」 |
(東京民医連調べ) |
北海道、青森、宮城、秋田、福島、茨城、埼玉、東京、新潟、福井、山梨、長野、岐阜、愛知、三重、和歌山、広島、山口、香川、長崎(日本共産党の五十嵐完二・新潟県議の要求で県当局が調べたもの)