2003年4月13日(日)「しんぶん赤旗」
【カイロ11日小泉大介】米軍によるイラクの首都バグダッド侵攻・支配と時を同じくして、イスラエルによるパレスチナ攻撃が激化しています。従来から広く指摘されてきた米のイラク戦争の裏にある米とイスラエルとの結びつきが早くも表に現れた格好となっています。
パレスチナ自治区ガザで十一日、パレスチナの子どもたちとイスラエル戦車の間に立ちはだかった平和組織の英国人メンバーが銃撃をうけ、病院に運ばれたものの脳死状態に陥るという痛ましい事件が発生しました。これは偶然ではなく、この間のイスラエルによるパレスチナ弾圧の一つの帰結にすぎません。
イスラエル軍は米軍がバグダッド中心部に侵攻し共和国宮殿を占拠した翌日の八日、パレスチナ自治区ガザのゼイトゥーン地区をF16戦闘機とヘリコプターでミサイル攻撃し、パレスチナ人七人を殺害し、約五十人を負傷させました。イラク戦争開始後初めてのパレスチナ自治区にたいする戦闘機での攻撃でした。
イスラエル軍は翌日の九日にもガザで銃撃をしかけ、十六歳の少年を含む四人を殺害、十人を負傷させ、十日にはミサイル攻撃で一人を殺害、子どもを含む十二人が負傷しました。
攻撃激化の経過からみて、米軍のバグダッド侵攻と支配がイスラエル軍の侵攻を勢いづかせていることは明白です。しかしそこには別の背景もありました。
イスラエルの有力英字紙ハーレツ五日付は、米国政府からイスラエル政府にたいし、ある書簡が送られた事実をすっぱ抜きました。
同紙によれば、書簡は、米国が現在、イスラエルにたいするイラクの脅威を無くす作戦を展開している、イラク戦争が終了した後、イスラエルの利益になるよう他の「過激」国家に「対処」することを約束したものでした。
米国は、無法なイラク戦争をすすめながら、イラクの隣国のシリアとイランにたいし「イラクへの軍事支援」や「大量破壊兵器の開発」などを理由に、なんら証拠もしめさず威嚇していますが、イスラエルはこれまでこの両国と激しい対立関係にありました(イスラエルは現在もシリア領ゴラン高原を占領)。
米国のボルトン国務次官は九日、「シリアはフセイン体制の崩壊を、自らの大量破壊兵器開発を断念する良い機会とするべきだ」とのべ、イスラエルのモファズ国防相は十日、これに応えるかのように、「フセイン体制が崩壊したいま、パレスチナは世界が変化したことを理解しなければならない」と主張しています。
イスラエルは、パレスチナへの攻撃を激化させるとともに、国際社会が具体化を急いでいるイスラエル・パレスチナ紛争停止とパレスチナ国家樹立のための「ロードマップ(道筋)」にたいしては、その骨抜きを図っています。米国の無法なイラク戦争と威嚇は、パレスチナ問題の解決も遠ざけ、中東をさらに混乱させようとしています。