2003年4月15日(火)「しんぶん赤旗」
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高すぎる国民健康保険料(税)、滞納者からの非情な国保証とりあげ…。国民の四割近く、四千六百万人が加入する市町村の国保が、重大な危機に直面しています。
いっせい地方選挙では、住民の悲鳴を無視した国いいなりの政治をすすめるのか、それとも暮らしと健康を守るあたたかい政治にするのかが大きな争点となっています。
自民、公明政権による経済不況や企業のリストラなどの影響で、いま国保加入者の半数は無職の人たちです。そうした状況のなか、高すぎる国保料が払えず、やむなく一年以上滞納して保険証を取り上げられたため、命と健康を奪われる悲惨な事態が各地で相次いでいます。
北海道札幌市では、季節労働者の男性(55)が、何度も血を吐いても「保険証がないから…」と病院に行けず、救急車で病院に担ぎ込まれた二時間後に死亡するという痛ましい事件がありました(二〇〇一年十月)。
にもかかわらず、多くの地方議会で日本共産党をのぞく「オール与党」が保険証取り上げの推進を自治体に迫っています。
兵庫県では二〇〇一年十二月の県議会で、自民党議員が「滞納している十三万世帯に対し……資格証明書を交付した件数は千三百一世帯、ちょうど1%になる。極めて低い水準である」と対応を迫りました。これに対して県は、市町村に対して「指導、助言をおこな」うと答弁。その後、同県の資格証明書の交付数は〇一年から〇二年の一年間で四・八倍に激増しました。
日本共産党は、住民と力を合わせて国保証の取り上げをやめさせる取り組みを各地で広げてきました。
埼玉県では、県内の九十市町村のうち、県都さいたま市など八十の市町村で資格証明書を一枚も発行していません(〇二年六月現在)。埼玉社保協(社会保障推進協議会)が十年前から毎年、県や各市町村に対し国保証を取り上げないよう交渉を続けるなど、住民と日本共産党のねばり強いとりくみが背景にあります。
国保法では、災害や病気など「特別の事情」がある場合は国保証取り上げの適用を除外されることになっています。ただし、具体的にどういう場合を「特別の事情」とするかは、「地方自治体が判断する」(坂口力厚労相)ものだと政府も認めています。
これを活用して、北海道旭川市では独自の基準をつくり、借金返済のために国保料が払えない場合や世帯のなかに失業者が出た場合も「特別の事情」にあたるとして、「資格証」の発行を抑えています。
全国で四千九百億円(二〇〇〇年度)にのぼる積立金(国保基金等保有額)などを活用して国保料を引き下げた自治体もあります。宮崎市では、日本共産党市議団が議会で繰り返し要求。市民と力をあわせて「国保税の引き下げを求める請願」を議会に提出するなど運動をすすめた結果、二〇〇〇年度、〇一年度と二年連続で、合わせて一世帯あたり平均年一万三千円引き下げました。
日本共産党は、政策提案「国民健康保険の危機を打開し、住民のいのちと健康をまもるために」を発表(三月十三日)。そのなかで、国保証取り上げの中止など自治体独自の努力を求めています。同時に、国が無駄な歳出を見直し、五カ年程度の計画をたてて大幅に減らし続けた国庫負担を八四年当時の水準に戻すことによって、国保財政を安定したものにし政府の責任を果たすよう提案しています。
国保料が高すぎて払えずに1年以上滞納すると、市町村は正規の保険証を取り上げて、代わりに「資格証明書」を発行します。その数は、2001年から02年の1年間で、11万1千世帯から22万5千世帯へと2倍以上に激増しました。小泉純一郎首相が厚相だった1997年の国保法改悪で、それまで「悪質滞納者」に限っていた国保証取り上げを、2000年から市町村の「義務」としたことが大幅な増加の原因です。
資格証明書になると、患者は病院の窓口で、かかった医療費の3割ではなく、全額をいったん支払わなければなりません。たとえば、医療費が1万円かかった場合、通常なら患者負担は3千円ですが、資格証だと1万円が必要となります。保険料を払えないから国保証を取り上げられた人に、医療費全額を準備してから病院に行けというのです。まさに「病院には行くな」と言わんばかりの仕打ちです。