2003年4月18日(金)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長は十七日、国会内で記者会見し、常任幹部会声明「米国による新しい植民地主義を許さない──イラク復興支援は国連主体で」を発表しました。
米英両国は、圧倒的な軍事力をもって、イラク全土を支配下におき、フセイン政権を崩壊させた。
さらに、米国は、「戦争は終結していない」として、戦闘を継続するとともに、米国防総省の「復興人道支援室」(ORHA)による軍事占領統治を開始し、米軍が勝手に指名した構成員による「イラク暫定統治機構」(IIA)を発足させようとしている。
日本共産党は、米英軍によっておこなわれている無法なイラク戦争をきびしく批判してきたが、いますすんでいることは、無法な侵略戦争のうえに、無法な軍事占領統治を始めようというものであり、絶対に容認できるものではない。
このような状況のもとで、日本共産党は、国際社会がつぎのような原則的立場にたってイラク問題に対応することが、重要であると考える。
第一は、国際社会がイラクの復興に対応するにあたって、米英両国による無法な戦争の追認をおこなわないということである。
米英両国が、圧倒的な軍事力で「勝利」をおさめたとしても、この戦争の無法性は、いささかなりとも免罪されるものではない。また、この戦争によって、おびただしい罪なきイラク市民が命を奪われたが、この非人道的な犯罪行為にたいする重大な責任は、まぬがれない。国際社会は、これらの責任を、きびしく追及すべきである。
米国は、今回のイラク戦争を、昨年の「国家安全保障戦略」などに明記された先制攻撃戦略の、最初の具体化としておこなった。米国政府の公式の諸文書は、世界の多くの国と地域を、先制攻撃戦略の予想されうる攻撃目標としてあげている。この無法な戦争を追認することは、こうした米国の先制攻撃戦略の追認を意味し、それは国連憲章にもとづく平和秩序の根本的な崩壊につながる。無法なイラク攻撃の追認をおこなわないことは、世界の平和秩序を回復していくうえでの重要な一歩となることを、強調したい。
第二は、米国による先制攻撃戦略のいっそうの拡大を、許さないということである。米国政府首脳は、イラクの隣国のシリアにたいして、制裁措置までちらつかせて威嚇をおこなっている。ブッシュ大統領は、「シリアには化学兵器があると思う」と、矛先をシリアにむける発言を公然とおこなった。米国政府高官は、シリアだけでなく、イラン、北朝鮮を名指しして、「イラクの教訓に学べ」と、どう喝した。
このような無法な威嚇、無法な戦争の拡大の動きは、許されない。こうした米国政府の姿勢にたいして、国際社会からきびしい批判がいっせいにおこっていることは、まったく当然である。
第三に、イラクの復興支援にあたっては、その主体となるのは国連をおいてほかにはないということである。国際社会は、国連が復興支援の中心的役割をになうことを確認し、合意される枠組みのもとで、すみやかに米英軍を撤退させるべきである。そうしてこそ、イラクの新しい政権を、イラク国民の意思を真に代表した政権とする道が開かれる。
いま米国がすすめているような、軍事占領継続を梃子(てこ)に、米国主導で、自分の気にいる政権をつくる動きを、国際社会は許してはならない。民族自決権をふみにじり、軍事力をもって外部から自分に都合のよい政権をおしつけるやり方は、新しい植民地主義というべきものであり、イラク国民との矛盾、国際社会との矛盾を、いっそう深刻にする暴挙といわなければならない。
米国のブッシュ大統領は、「中東の民主化」というスローガンのもとに、まずイラクの政権転覆をはかり、それを突破口にして、中東諸国、アラブ・イスラム諸国を、アメリカいいなりの国につくりかえようとする政治戦略を公言している。アラブ世界、イスラム世界に、はかりしれない無法と混乱をもたらすこのような横暴な戦略を、許してはならない。
日本政府は、米英の無法な戦争に支持をあたえるという恥ずべき米国追従外交にくわえて、米国防総省の軍事占領組織──「復興人道支援室」に、政府要員を派遣する計画をすすめている。
これは無法な戦争と占領政策への新たな加担を意味するものであり、絶対に認められない。「占領行政は交戦権の行使にあたる」として、憲法九条にてらしてこれを否定してきた政府自身の従来の立場からみても、米軍の占領行政への参加は許されない。
無法な戦争を認めず、国連中心のイラク復興支援のために力をつくすことこそ、憲法九条をもつ国の政府がとるべき態度である。