日本共産党

2003年4月18日(金)「しんぶん赤旗」

ブッシュ 無法戦争 <20>

文化遺産の略奪

大量流出の裏に米業界団体


 バグダッドのイラク国立博物館などから、世界的に貴重なメソポタミア文明の遺物が大量に略奪されています。米政府は「これは犯罪だ」と認めました。しかし一部の業界団体の圧力を受けていたとの指摘もあり、その対応ぶりに“油田は守っても文化遺産は守らないのか”と国際的な批判が高まっています。

持ち逃げ放置

 「博物館が破壊されるのに(米軍がバグダッドに侵攻してから)四十八時間しかかからず、少なくとも十七万点の遺物が略奪者に持ち逃げされた」─十三日付米紙ニューヨーク・タイムズは略奪のすさまじさを報じました。「何がなくなったかを完全に調べるのには数週間、あるいは数カ月かかるかもしれない」といいます。

 十三日のテレビのインタビュー番組でもこの問題が取り上げられ、「なぜ略奪を許したのか」と聞かれたラムズフェルド米国防長官は、「許したのではない。起こってしまったのだ。よくないことが人生では起こるし、盗みをするやつもいる。それは米国でも、どの国でも起きることだ」と開き直りました。

米に批判の声

 しかし、被害の甚大さが明らかになるなかで、米政府も態度を変えざるを得なくなりました。パウエル国務長官は十四日に声明を発表し、「こうした略奪は歴史の理解にとって取り返しのつかない損失を引き起こしている」とし、失われた遺物は「イラクの国内法と国際法のもとで、イラクの財産」であり、それを保持することは犯罪だと認めました。

 ところがイラクの文化遺産をめぐっては、米政府の対応の問題を指摘する声が国際的にあがっていました。

輸出緩和狙う

 十日付の英紙ガーディアン(電子版)は、「米国の美術品販売者らが輸出を厳しく制限するイラクの法律をなくすよう働きかけた結果、骨とう品の略奪の恐れが高まった」と報じました。

 そのなかで批判されているのが「アメリカ文化政策評議会」(ACCP)という団体です。骨とう品の収集家や芸術関係の法律家らによって、昨年結成されました。

 このACCPが今年一月、イラク戦争を前に米国の国防、国務両省の当局者と懇談し、フセイン政権後の新政権下で、文化遺産を輸出できるよう、イラクの国内法を緩和することを働きかけたといわれています。

 ACCP側はこれを否定しますが、その幹部の一人、ウィリアム・ピールスタイン氏は、イラクの法律を「保護主義的」と批判。二月二十五日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、同氏が「もし戦争が起これば(ACCPは)米国政府が『サダム後の分別のある文化行政』を確立し、古物品に関して厳しいイラクの法律の一部を緩和するよう期待している」と言明したと伝えています。

 また米パシフィカ・ラジオのニュース番組「デモクラシー・ナウ」は四月十五日の放送で、「イラクの古物法がイラクを守っている。業者とつながった一部の米国人グループによる介入はまったく無用だし、法律のいかなる変更もきわめて重大なものとなるだろう」という関係者の批判の声を紹介しています。(ワシントンで山崎伸治)


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp