2003年4月18日(金)「しんぶん赤旗」
米ワシントン・ポスト紙は、十六日付社説「同盟諸国に呼びかけよ」で、イラクを占領した米国の単独支配にかわる国際的な関与の必要性を主張しています。
社説は、イラクでは病院や不可欠の施設が略奪に遭っているのに米軍はこれに対応できない、多くの国から支援の申し入れがあるが、米側はこれら国際的関与を「米国の勝利」を前提とするよう求めていると指摘、また米国はイラク戦争に反対した仏、独、ロとの間でもなお緊張関係にあると述べています。
社説は、「国際的な治安維持も、世界銀行のような機関も、国連の保証なくしては、イラクの復興や、イラクの石油売買でさえも困難となろう」として、イラクの行政面での復旧過程においても「合理的な計画」が採用されるべきだと述べています。
ブッシュ米大統領は、国連について「戦後のイラクで不可欠の役割を果たす」との点では同意しました。ところが、ウルフォウィッツ国防副長官らは、イラクの復興過程を米国が選んだイラク人にだけ委ね、協力国も英、オーストラリア、ポーランドの参戦三カ国に限定すると主張しています。これについて社説は、この方向では「国連での合意を不可能にさせかねない」と懸念を表明しています。
社説はそのうえで、ブッシュ米大統領に対し、こうした国防総省の計画を排して、国連および他の国々、フランスやドイツにイラクの復興協力を呼びかけるよう訴え、それは「米国を危機と負担から救い出す」ことになろうと述べています。
【ワシントン14日山崎伸治】米紙ニューヨーク・タイムズは十三日付社説で、「ブッシュ大統領がイラクでの勝利を喜ぶのは当然としても、軍事的な成功を先制攻撃戦略の有効性と混同すべきではない」と指摘。シリアやイラン、北朝鮮に対して軍事力行使を狙っているとして、ブッシュ政権を批判しました。
同社説は「米軍兵士は命じられれば、ダマスカスやテヘラン、平壌でさえ、銅像を倒すことができるのはまちがいない」とした上で、「問題はそれぞれのケースにはそれぞれの複雑さ、それぞれの成り行きがある。世界の諸問題について“一つで全部間に合う”対処法はなく、仮にあったとしても、イラクがその型板だとは到底言えない」と批判。「(イラクの)状況は混沌としたままで、米国の介入がイラクに民主主義と繁栄をもたらすのかどうか、中東の情勢が改善するのかどうか判断するには長い時間がかかる」と指摘しました。
さらに先制攻撃戦略については、「多くの人々や国にとって、ブッシュ政権がサダム・フセインを追い込んだやり方は、この戦略が引き起こす懸念を裏付けた」とし、「幸福を広げることを意図した戦略であっても、反感を広げる結果となるなら、たとえいくつの銅像を倒したとしても、役には立たない」と批判。「米国には、本当に必要になるまでは剣をさやに収めておく自信と賢明さがあることを示すことがいま特に重要だ」と戒めています。