2003年4月19日(土)「しんぶん赤旗」
政府は十八日の衆院有事法制特別委員会で「国民の保護のための法制について」と題する新たな文書を示し、福田康夫官房長官が説明しました。同文書は、昨年末に政府が明らかにした「国民保護法制」の「輪郭」の内容を詳述したもの。「国民保護」をうたっているものの、同法制の本当の狙いが、米軍や自衛隊の軍事作戦をなによりも優先する体制づくりにあることを、いっそう浮き彫りにするものになっています。
新文書は、有事の際の自治体の役割について「国の方針に基づく措置の実施」にあることを改めて強調。その際、都道府県と市町村が「国民保護対策本部」を設け、「国の職員を(同本部の)会議に出席させる」ことを初めて明らかにしています。
十八日の有事法制特別委で石破茂防衛庁長官は「自衛官を連絡員という形で派遣し、ニーズに応えるようにしていく」とのべ、自衛隊を同本部に参加させる考えを示しました。
さらに、新文書は住民の避難・誘導や、応急措置としての土地・建物の一時使用、通行禁止区域での車両移動などを、自治体や警察だけでなく自衛隊がみずから実施できることも初めて盛り込んでいます。交通規制や立ち入り制限に従わなかった場合の罰則も規定しています。
「自衛隊がここに陣地が必要だとか(要請を)いうのは、あくまで軍事上の必要からだ」。十八日の有事法制特別委では自民党議員から、こんな指摘があがりました。これは、自衛隊法にもとづく土地収用についての質問でしたが、自衛隊があくまで軍事作戦最優先で行動することを明らかにするものでした。
自衛隊の「国民保護対策本部」への派遣は、自治体に「国民保護」の名で課せられるさまざまな措置が、あくまで自衛隊の都合で左右される危険を示しています。
新文書は、政府が指定公共機関に指定した放送事業者に強制する放送内容について、警報と避難指示だけでなく、新たに「武力攻撃事態等の状況」を加えました。
福田官房長官は、十八日の有事法制特別委で、戦争協力が「責務」となる指定公共機関にNHKだけでなく、民放を指定する可能性を改めて言明しました。
「武力攻撃事態等の状況」の例に、新文書は「住民の避難や救援の状況」だけでなく、「その他の対処の状況等」も加え、幅広い政府の裁量を認めた表現になっています。これに戦況報道などが含まれれば、かつての「大本営発表」になりかねません。(田中一郎記者)