2003年4月19日(土)「しんぶん赤旗」
イラク戦争で、罪のない民間人を数多く殺傷した残虐兵器・クラスター爆弾(集束爆弾)。日本の基地から出撃した米空母艦載機もこの「非人道」兵器を使っています。日本政府はその残虐性を非難しないどころか、みずから保有しています。(田中一郎記者)
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イラク戦争での死者数を報道をもとにまとめている民間団体「イラク・ボディ・カウント」によると、すでに最低でも千六百四十二人、最高で千九百四人(十八日現在)の民間人が殺されています。このうち、クラスター爆弾による被害も少なくありません。
アラブ首長国連邦の新聞によると、十四日に四歳の少年が、クラスター爆弾の子爆弾で大けがを負ったほか、「イラク・ボディ・カウント」によると、十一日にも不発弾となったクラスター爆弾によって二人の子どもが殺されています。
米海軍横須賀基地(神奈川県)を母港にし、イラク戦争に加わっている空母キティホークの艦載機は、開戦直後から連日のようにクラスター爆弾を投下しました。
同空母艦載機が初めてクラスター爆弾を投下したのは、三月二十五日とされます。バグダッド南方のカルバラに、FA18戦闘攻撃機が同爆弾二発を投下(「朝日」三月二十六日付夕刊など)。二十六日、二十七日、二十八日もたて続けに使用したことが報じられています。
日本政府は、米軍のクラスター爆弾の使用について、なんの批判もしていません。
日本共産党の小泉親司参院議員が二月十九日に出した質問主意書に対し政府は、国連のこれまでの会合で「その使用禁止・制限を主張したことはない」ことも明らかにしました。
それどころか、昨年の「防衛白書」は、米軍のアフガン攻撃で使われたクラスター爆弾を「広範囲にわたる目標を効果的に制圧」する「先端軍事科学技術を駆使した最新兵器」の一つとして、肯定的に紹介しています。
小泉氏の質問主意書に対し政府は、航空自衛隊が米軍と同型のクラスター爆弾を保有していることも明らかにしています。
搭載できる空自の航空機は、F1、F2各支援戦闘機、F4、F15各要撃戦闘機、RF4EJ偵察機。保有目的を「敵の着上陸侵攻に対処するため、通常爆弾では撃破できないような広範囲に展開した侵攻部隊の車両等を撃破」するためと説明しています。
防衛庁は、保有するクラスター爆弾の量は明らかにしていません。
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調達開始は一九八七年度。毎年八億から十二億円かけて、昨年度で調達を終了。合計百四十八億円をつぎ込んでいます。
クラスター爆弾には、空から投下するもののほか、地上発射型のものもあります。陸上自衛隊は「多連装ロケットシステム自走発射機」(MLRS)の配備を九二年度から開始し、現在八十両を保有しています。
同発射機から発射されるロケット弾からは、一発あたり六百四十四個の子弾がばらまかれるとされます。
〇三年度予算でも、三両を新たに調達する費用として、五十八億円を計上しています。また、発射するクラスター弾の調達のため、毎年十八億円から二十二億円の予算を組んでいます。
日本共産党の吉岡吉典参院議員と児玉健次衆院議員による昨年三月の矢臼別演習場(北海道)の調査では、MLRSの演習のため十五ヘクタールに及ぶ着弾場が〇一年に完成していたことが発覚。本紙でも、「残虐兵器の演習施設 矢臼別にクラスター弾着弾場」の見出しで昨年四月十一日付で報じています。