2003年4月19日(土)「しんぶん赤旗」
【ワシントン17日遠藤誠二】米大統領文化財諮問委員会のサリバン委員長ら三人の諮問委員は十七日、米軍によるイラク侵攻でバグダッドの国立博物館が略奪され貴重な文化財が失われたことに抗議して辞任しました。
ブッシュ大統領に辞表を提出したのは、クリントン政権時に任命されたサリバン委員長とラニーエ、バイカンの両委員。
サリバン委員長は辞表のなかで、戦前、米国の研究者はバグダッドの国立博物館やイラク国内の史跡の場所などの情報を国務省に伝えていたことを説明、「われわれの国の怠慢で、悲劇を防げなかった」とのべ、略奪で多くの文化遺産が失われたことは米軍に責任があると指摘しました。
ラニーエ委員は、「政権は、イラク侵攻と文化財が失われることについて思いをはせることを全くしなかった」とブッシュ政権を厳しく批判。バイカン委員はロイター通信に対して、「われわれは石油の価値については知っているが、歴史のある文明の遺物の価値については何も知らない」と語りました。
諮問委員は大統領が任命、委員会は十一人で構成されます。
【パリ17日浅田信幸】世界のイラク考古学者らが十七日、パリのユネスコ本部で記者会見し、イラク各地の博物館や図書館が略奪や放火によって「人類の知識の幼年期」にあたる財産が失われたと指摘するとともに、米英軍が保護措置をとらなかったことに怒りをあらわにしました。記者会見したのはイラク考古学米国調査団のギブソン団長、大英博物館のマクレガー館長ら考古学者や古文書学の専門家三十人。
失われたもののリストはまだ部分的ですが、ギブソン氏は「最も信頼の置ける博物館、美術館が略奪にあった」と述べ、バグダッド博物館にあったくさび形文字の粘土板八万枚のすべて、世界遺産に登録されたハトラの像のすべてが失われ、国立古文書館では十六世紀以来のイスラム法廷の全判決文が焼失したことなどを明らかにしました。
会見では、なぜ略奪が起こったのかとの質問に、ニューヨーク大学に所属するイラク人考古学者サルマ・エル・ラディ氏が「私に聞くことではないでしょう。アメリカ人のところへ行きなさい」「博物館の女性管理人が米兵に介入するよう頼んだら、“われわれは関係ない”という返事だった」と声を荒らげる一幕もありました。